おやすみ王子様ちかちかと瞼の裏で小さな星が見える、いや見えた、と数拍遅れてリョーマが衝撃を知覚した時には既に不二が目前へと迫っていた。
「……あ、スンマセン」
「いや、僕の方は何も問題無いけれど。……越前、キミ、大丈夫かい?」
「大丈夫っス。だから腕どけて」
つい今しがた二人が正面衝突を起こしかけたのには訳がある。真夏日の今日、昼休憩に入るなりコートを飛び出したリョーマは、熱風が頰を打つ外気を煩わしく思いながらお気に入りの休憩スポットを目指して歩いていた。それはもう一心不乱に。そう、目深に被ったキャップが視界を狭めていたのに加えて俯きながら歩いていたリョーマには部室の曲がり角からやって来た不二の姿が殆ど見えていなかったのである。
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