きっかけとなし崩し明儀が『地師』として上天庭に在籍するようになり、何度目かの秋が訪れた。
「やあ、明兄!」
自分の殿のような気軽さで地師殿、それも主たる明儀の執務室へと勝手に入って来る奴がいた。
最早“何時もの事”なので、明儀は読んでいた書簡から目を離す事すらしない。
顔を見なくても分かる。
緑の袍に白地の上衣を羽織り、軽やかな言動で明儀に付き纏う青年。
風師青玄こと、師青玄だ。
…………風水ニ師に近付く為に地師と成ったのは確かだが、風師にやたらと懐かれたのは予想外だった。
師無渡は思い浮かべるだけで腑が煮え繰り返る程憎らしいが、師青玄はそこまで憎めないでいる現状も、どうにも釈然としない。
そんな複雑な心境の明儀の前で、師青玄は執務室のドアを閉めるなりパチンと指を鳴らした。
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