亡霊の生まれた日 夢のなかで、幼い自分の首を絞めていた。
小さな喉仏。細い手足。病的に白い肌。
不気味なまでに生気を感じさせない子どもは、抵抗もせずにただじっとこちらを見据えている。その、凪いだ水面のような目が神経を逆撫でする。
何もできないくせに落ち着き払って。
何もできなかったくせに生き延びて。
―お前なんて生まれてこなければ―
そう思い手に力を込め
そこでいつも夢は終わる。
◇◇◇
自分は可愛げのない子どもだったのだろう。
実際の思い出と夢のなかの自身とを照らし合わせながら、スペクターは鼻で笑う。誰にも心を開かず施設の隅でずっと膝を抱えていた孤児の自分と、殺されそうになっても顔色ひとつ変えず寧ろ相手を挑発するかのように見つめ返していた虚像の自分。さぞかし周りの大人を困らせ、ときには苛立たせていたに違いない。
2635