赤をほどく「求導師様、そろそろ誘ったらどうだ?ほら、あの子。〇〇ちゃん」
陽射しの差す農道の脇で、坂口さんがにやりと口角を上げる。軽トラックの荷台には、透明なパックに詰められた苺がずらりと並び、陽を受けて赤く輝いていた。甘い香りがふわりと風に乗り、鼻先をかすめていく。
「……誘うって、何にですか?」
思わず返した声が、どこかぎこちなく響いた。突然名前を出されたせいで、胸のあたりが急に熱を帯びていく。見られないように、そっと手を握りしめる。
僕の様子に気づいたのか、坂口さんはさらに楽しげに腕を組み、顎をぐっと上げた。
「何って、いちご狩りに決まってんだろ。あんたらに見せたい苺があるんだよ。今年はようできてな。〇〇ちゃんも連れてこいよ。きっと喜ぶぞ?いいデートになるだろ?」
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