夜明け前、夜闇に溶けて暗いグレーに染まった天井が目に映る。ぱちぱちと瞬きをして、自分の目が覚めていることに気がついた。
隣で眠っている恋人を起こさないようにそっと体を起こす。頭を動かしてベッドヘッドに置かれているデジタル時計を見れば、未だ深夜と呼べる時間を指していた。
外は不気味な程に静かで、見ればもう三月だというのに雪が降っている。道理で、と納得した。
そういえば、今年は異常気象だとかで、先月も、先々月もひどく寒かった。東京にこれほど雪が積もったのは何年ぶりどころではないらしい。言われてみれば、冬弥の記憶にも雪が積もる東京というのはあまりない。
この分だと桜の開花宣言も遅いのだろうな、と思ったところで、ふるりと体が震えた。寒い。なにか羽織るものを取りに行こうかと思ったが、その為には足を冷たい床におろさなければいけない。その方が寒そうだな、と冬弥は少しだけ毛布を引き寄せた。
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