既に掴まれていた 古くなった紙のにおい、埃が混ざったような空気、ページを擦っただけでもよく響くほどの静寂。まるで異世界にでも迷い込んだような心地になるので、図書室が好きだ。だから、クラスメイトが「退屈そうだ」と言った図書委員の仕事も、冬弥にとってはまったく苦ではなかった。
あるべき場所にない図書を本棚から掬い取って、背表紙を確認して、本来の居場所を探す。その間にまた迷子の図書を見つけて、拾う。気がつけば、本をミルフィーユ状に重ねた左腕はずっしりと重くなっていた。
ふう、と息を吐いた。
この学校には無頓着な人間が多いのだろうか? と流石に疑問に思う。本があるべき場所になければ、後で困るのは自分たちだろうに。
背後の窓から、白くてやわらかい光が手元を照らしてくる。辞書サイズの単行本、そのカバーの際が経年劣化でふさふさとしていて、黄ばんでいた。対して、表面はカラカラに渇いた大地のよう。それをつうっと撫ぜていると、
1448