風の生まれた日のこと「それで、お前の誕生日はいつなんだ」
「私の?」
エンカクの誕生日についてはあれだけぎゃあぎゃあと大騒ぎした癖に、自身について聞かれた途端にきょとんと首をかしげてみせる。てっきりさあ自分の誕生日も、と強請られるものだとばかり思っていたエンカクは肩透かしを食らった気分であったのだが、当の本人はといえば至極どうでも良さそうな顔のまま、あっさりと口を開いた。
「ああ、書類上は確か」
そうして告げられたのは約一か月ほど先の日付だったが、その声にはただの数字を読み上げている以上の感情は乗っておらず、ともすれば敵の残数をカウントしているときのほうがよほど人間味のある声をしているほどだった。
「だってね、私記憶喪失なんだよ……あ、その顔はまだ疑ってるな、本当に何も覚えてないんだってば。だからそんな覚えてもいないものに思い入れを持てと言われてもね」
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