身だしなみに最低限以上の興味がない人間の朝など、顔を洗って歯を磨いて、まあそのくらいで完了である。あとは一応、ひげ剃りなど。
「何をって、ひげ剃りだよ。見ればわかるだろう」
確かに彼の使っているような立派なシェーバーではないけれど、私だって一応は成人済みの男性なのでひげを剃る必要がある。エンカクのポカンとした表情は寝起きということを差し引いたとしてもさらに滑稽なほどで、人間とは驚くとここまで表情が抜け落ちるのかと笑ってしまいそうになるほどだった。無論、剃刀を持ったままで大爆笑などしてしまえば怪我の危険性があるため私の腹筋には過度な我慢を強いたが、おかげで午後ちょっと引き攣って痛かった。我が身体のことながらなんて脆弱な腹筋だ。それはともかく。
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