星に願いを ああ、これは夢だ。と。
御手洗暉は、すぐに気が付いた。なぜなら隣に、死んだはずの『彼』が居たからだ。
共に過ごした長くない数日の中で、散々見慣れた黒いスリーピースと濃い青のナロータイ。フレームレスの眼鏡の奥の、切れ長で、涼しげな薄茶の瞳。
その目が細められ、顔に笑みが刻まれる。何度も見た、『人好きのする』と表現すべき微笑。
そして、口が開かれ……
「-----」
違和感に、すぐに気がついた。
声が、聴こえない。
夢だから音が無いのか? そう考えて。一瞬後には否定する。他の音は……たとえば足音なんかは、確かに聴こえているのだ。
ただ。隣を歩く男の声だけが、聴こえない。
どこか縋るような心境で、周りを見る。そうすれば、そこが“何処”なのかに気が付いた。
4428