檜佐木は犬みたいなやつだ、と思う。
目の前で大口を開けながらスヤスヤと穏やかに眠る男の姿を見て弓親は情事後特有の気だるさの中でつまらなさそうにそんなことを考えていた。
犬……といっても、昔流魂街で見たような、人を寄せ付けず荒れ狂って痩せこけたような野良犬ではない。弓親の頭の中には、この間現世に行った時に見た大型犬海外原産のもの——啓吾がジャーマン・シェパードだかなんとか言っていたっけ——が浮かんでいた。
大きな身体に、見る人が見れば場合によっては恐怖心を抱くでろう風貌。猛獣のように見えてその性格は温厚で友好的。飼い主の命にはとても忠実で聞き分けがよく、気を許した相手には尻尾を千切れんばかりに振って懐く。
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