お茶にまつわる跡塚①ほうじ茶【ほうじ茶】
仕事が終わらない。
目の前の右下に小さく23時と表示されたパソコンから左手を離し、跡部は自分の米神に親指と小指を押し付けるようにしながら掌で視界から光を消した。
先程からうっすらと火照る身体は暖房の効きすぎか、身体が何かを訴えかけているのか。だが、それを敢えて気付かなかったふりをする。
跡部景吾は多忙を極めていた。
「跡部、少し休憩しないか。」
ガチャリとドアノブが回る音と同時に、背後から共に住んでいる恋人、手塚の声がした。
「悪いが、」
「昨日も碌に寝ていないだろう。少しは俺のいうことも聞け。」
そう言って、手塚は跡部の手元に白磁のティーカップと小さな皿の上に砂糖菓子を乗せた盆をコトリと音を立てて置いた。
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