明日テイクレランドに行こう。
そうアシッドが決めたから、明日のオフの予定はそうなった。
そうと決まれば早く休もうと、二人は連れ添ってそれぞれの部屋の前まで進む。
「おやすみ」と、いつものように軽くキスを交わそうとしたフォルテの腕を引いて、アシッドは自室へ兄を連れ込んだ。
「アシッド……?」
「ね、たまにはさ、一緒に寝ようよ。」
ぽす、とベッドに腰掛けアシッドが笑う。いつになく幼く映るのは、その可愛らしい我儘の所為か。
「たまには、って……」
フォルテが言い淀んだその先を、アシッドは正確に理解していた。
翌日がオフとなれば高確率で行為に至り、そうしてフォルテが体力を使い果たしてしまった時にはそのまま同衾している。たまには、なんて白々しく聞こえるほどにまずまずの頻度で二人はそうなっていた。
くすり、と笑い、アシッドは立ち尽くしたままのフォルテの手を取る。
「何もしねーって。一緒に寝るだけ。ね、たまには、さ」
いいでしょ?と首を傾げるのがあまりにあざとい。あざといと、思うのに。
「……寝るだけですからね」
「ん!」
フォルテがすぐに折れることなど分かり切っていたように上機嫌で頷いたアシッドは、ベッドを半分開けて寝転がる。元よりダブルサイズであるから、狭くはない。
フォルテもため息をついて、慣れたようにアシッドの右側へ体を滑り込ませた。
「チュロスでしょ、ポップコーンでしょ、」
「キャラメル味は絶対です」
「うん、も一個はオレが選んでいい?」
「うん」
二人しかいないけれど、なんとなく声を潜めて。まるで秘め事のように明日やりたいことを囁き合う。
「──で、次は空飛ぶ絨毯に乗って……フォルテ、寝る?」
「ん……」
うとうとと、普段切れ長な目をとろりと蕩してフォルテが曖昧に返事する。ふは、と苦笑して、アシッドは兄を寝かしつけることにした。
「おやすみ、フォルテ」
明日楽しみだね、と言葉にはせずに額にキスを落とす。
「んー……」
するとフォルテの腕が伸びてきて、アシッドの後頭部を雑に鷲掴んで、引き寄せて。
「っ……」
「明日、……」
楽しみ、とでも言うつもりだったのか。
直後に寝息を立て出した兄に目を丸くして、そしてアシッドは破顔した。
触れるだけのキスはおやすみの合図。まるで同じことを考え、そして口にしようとしていたらしいフォルテにもう一度口付けて、アシッドも布団に潜り込んだ。