これからの話「これから、か…今まで考えたこともなかったな。常に死と隣り合わせにある毎日の中で、これからなどと」
これからの話をしましょう。ディオン様は、何がしたいですか?
本当の意味での久々の再会に、散々泣き、顔を寄せ、触れ合ったあと。二人を包む空気はこれまでに感じたことがないほど穏やかで、もうずっと身を委ねていたい気分だった。絡めたままの指先から伝わる互いの体温も二人を内側から温めてくれる。尽きぬ話題の中で、テランスがそう問いかけた。
何がしたい、か。昔はやりたいことやなりたい自分の理想像をたくさん思い描いていたはずだった。だがいつからか、ただ目の前の困難に立ち向かうことに必死で、明日のことなど考えられなくなっていた。成し遂げたいことはあったが、自分が心から望んでいたことだったのかと問われるならば、返答に迷ってしまうだろう。今思えば、それは苦しかった。けれどもいつも傍らにあった光のおかげで、苦しいだけの日々ではなかった。ああまったく、自分は果報者だ。全ての人がこのような恩恵に浴することができるわけではないだろう。
4793