カジノディーラーの受難△
廃チャイナタウンの一角
今にも潰れそうな町中華の店
町の衰退と借金で店は潰れる寸前であったが息子を売りに出すことで店と両親はなんとか守られた
中華料理屋の息子、荒仁は手先の器用さから齢10にしてカードを覚えさせられる
荒仁は、店と母親の為にカードを覚え、12になる頃にはすでにテーブルに立っていた
いまでは立派に客を捌いてカジノの売り上げに貢献している
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廃チャイナタウンの一角
長く愛された痕跡のある銭湯
町の衰退で若い者の利用が段々と減るなか、定休日にも利用者がいた
ある者は腕に錦鯉を、脚に龍を、背中に鬼を飼っていた
銭湯は憩いの場であった
血も涙も疲れも、全て洗い流す
銭湯では子供が働いていた
それぞれ、もう15と10になるらしい
二人は仲の良い兄弟だが、身寄りがない
薪を割り、火をくべ、釜を洗い続ける毎日
とうとう、情に絆されたひとりの男が兄弟を引き取る事になる
その男は身体に嵐と大波を飼っていた
いまの満邦と真宝の親父である
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廃チャイナタウンから少し離れたネオン街
最近、無理矢理に勢力図は変わった
力業で頭が替わり、右肩上がりにネオン街のトップになったマフィアグループ・シグマ
"神"の一蹴りで、道は拓き、人間は宙に舞う
正に、God move
ただ、"神"こと摩利人は既に飽きていた
恐らく、力を持つ者としての宿命だった
何も己を満たさない
思い付く限りの強欲を尽くしては虚しくなる
この人生に残すモノは無いだろう
いや、たった一人の妹だけが気掛かりだ
妹のまほろを託せる人間を見つけなくてはならない
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"神"の妹、まほろは兄の摩利人とNo.2の王太と共にカジノのVIPルームで「今日は何して遊ぶの?お兄ちゃん」と新しく仕立てたというドレスを幾つか並べていた
「今、着てるのでいいだろ?」
「お兄ちゃんに着せてもらいたくて作ったの!選んで!」
彼女の趣味は、兄を恋人扱いする事だった
摩利人は苦い顔をしてドレスを選んでやり、ため息をつきながら背中のジッパーを上げてやる
兄の目から見て、肌の露出が少ないドレスを選んだつもりだが「さすが、お兄ちゃん!私の事、分かってる!」とまほろは喜んだ
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荒仁は「今夜もいつも通りにカードを出して、少しのチップを貰うんだろう」と思っていた
たまに、ペド趣味の客にVIPルームへ呼ばれるけど「腹の調子が悪い」と言ってダッシュすればなんとか逃げられていた
だが、今日のテーブルはマズい
「カード、初めてなんだ」
黒いスーツと両腕に青い腕章は魅那斗會の人間だ
初めてなら、鴨にしないでおこう
まずは、楽しんで貰わなくては金にならない
「初めてのお客様ですね」
「うん、教えて」
あらちゃん、と懐かしいあだ名を耳にした
客を良く見れば、大柄な身体で端正な顔立ちをしている
知り合いとは思えない
「? 教えてよ、あらちゃん」
だが、このあだ名で呼ぶのはただひとり
「……真宝、なのか?」
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「あ、部屋に兄ちゃんもいるよ?」
「せっかくだから、会ってよ」と、昔の面影ある眉毛や目元で可愛らしく小首を傾げる真宝に、ついつい素直に着いていったのが荒仁の運の尽きだった
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……私が書けそうなのは、これくらい、かな?
廃チャイナタウンは魅那斗會が仕切ってたけど、シグマがネオン街からちょくちょく茶々入れてるっていうか、なんというか
シノギの違いでこういうの変わるから
ざっくりすると
ネオン街のカジノにあらちゃんは身売りされ、やや子から離されるもカードで生き延びて
浅観音兄弟は運良くも悪くも拾われて、血と権力の争いへ巻き込まれている
感じ