踊子編・アフター周りに集まっていた大勢の人への対応が終わって、やっと一息をつく。
もともと人の目があるところで踊っていたにも関わらず、通りすがりの人々は私たちの踊りに感激を受けたようだった。そのあとは人が山のように集まってきて、新聞記者ばりの怒涛の質問攻めやら、キャスティに色目を使ってくるような者もいた。中にはいいものを見せてもらった、と少しばかりのリーフを置いて去っていく人たちもおり、断る間もなかった。
今手元にはその塵がつもり、それなりの額になったリーフがある。
「……たくさんもらっちゃったわね?」
「そうですねぇ……さて、どうしましょうか」
ここでの収入は予想外であり、しかし日々の費用として使うには、少しもったいない気がした。
せめて、二人だけで共有して使い切りたい。
「……ねぇ、テメノス。あなたがよければなんだけど」
「どうしました?」
「さっき対応してるとき、あそこのお店にある美味しいお酒を教えてもらったの。でも結構なお値段で……ね?」
「……なるほど。では宿屋の部屋で飲みますか。流石に先程の騒ぎで酒場で飲みづらいですし」
「そうこなくっちゃ」
私が了承の意を伝えると、蕾の開いた花のような笑顔になる。
行きましょ、とキャスティは私の腕を掴んで、また上機嫌で鼻歌を歌いながら、店への道を歩いていく。やれやれとその手に引かれながら、私も歩き出した。
――彼女が先ほどのように笑って過ごせる日々が、これからも続きますように。