mbr後彼氏にばれる前の一人で抱えてるとこ 朝のチャイムが鳴る直前、桜はいつものように教室のドアを開けた。
「いつも通り」のつもりなのは桜だけかもしれない。足取りは重く、身体は昨日の出来事のせいでひどく痛む。
「桜さん、おはようございます!」
楡井の元気な声が響き、それに続いて一緒に居た桐生、柘浦が「おはよう」と声をかける。視線を巡らせた先に、蘇枋の柔らかな笑みがあった。
「桜君、おはよう」
その声を聞いた瞬間、自分がひどく汚れた存在のように思えて、呼吸気管がぎゅっと締まる。ほんの一瞬、目を細めた。
──大丈夫だ、何もなかった。何もない。
そうやって自分をごまかす。誰にも言えるはずがない。言ったところで時間が戻るわけでも、されたことがなくなるわけでもない。あのおぞましい感触も、あの耳障りな声も、どれ一つとして消えやしない。
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