あの日の背中ŹOOĻとTRIGGERが同じ番組に出演することも少なくない。俺たちの間にあったことを何も知らない世間から見たら、今をときめくアイドルという点で同じ場所に立つことも不自然ではないのだろう。それは俺が望んでいることのようでもあり、どこか居心地が悪いようでもある。今日もその「同じ番組に出演する」日だった。
少し用を済ませるために楽屋を出て廊下を歩いていると、少し先に龍之介の姿が見えた。1人で歩いている。向かっている先はTRIGGERの楽屋だ。戻ろうとしているのだろうと容易に想像がつく。
何の迷いもなく、その背を追った。「今日もよろしく」と挨拶がしたかった。本当にただ、それだけだった。
すぐにその距離は縮まっていく。そろそろ声をかければ聞こえるだろう。
名前を呼ぼうと口を開いた、その瞬間。
その背があの日の光景と重なる。美しく気高く、どうしようもなく遠い、俺の罪そのもの。
息が詰まる。声が出ない。足を止め、遠ざかる龍之介に震える手を伸ばす。
世の中がどれだけ俺たちを隣に並べようと、どれだけ、誰が、それを認めようと、過去は変わらない。俺はあの人を傷付けた。一生許されないことが決まっている。それでも前へ進んでいいと笑ってくれたけれど、それでも、俺の足はもうあの背を追えない。
「り、…ッ」
涙が溢れそうになり、歯を食いしばる。あの人の姿はもう、見えない。
誰よりも近付きたいのに、怖くてたまらない。どうしたらいいんだ。俺は一体、どうしたら。
誰に何を言われても、言われなくても、一つだけ分かることがある。
あの背に向かって名前を呼ぶなんて、俺にはきっと、許されないんだ。