君の瞳に乾杯最近、不思議に感じることがある。虎於くんの瞳がキラキラしているように見えるのだ。
綺麗な人だし、かっこよくて美しい。これまでも輝いて見えていた。だけど最近特に、俺を真っ直ぐに見つめるその瞳が、より一層綺麗に思える。
何が変わったわけでもないのに何故だろう。
「龍之介?」
名前を呼ばれてハッとする。虎於くんが怪訝そうな顔で首を傾げながら俺のことを見ている。ほら、今も。キラキラしてる。
「なんでもないよ、ごめんね」
「なんでもなくないだろ、上の空で」
「うーん…」
「俺の話聞いてたか?」
うっ、と言葉を詰まらせると彼は面白くなさそうに口を尖らせた。怒らせてしまっては元も子もない。隠し事はしたくないし、素直に言ってみようか。
「虎於くんの目がすごく綺麗で、最近ちょっと落ち着かないんだ」
「……は?」
「よく分からないよね。ごめん、俺もよく分かってなくて…」
なんでだろうね、なんて虎於くんに聞いても仕方ない。居た堪れなくなって視線を落とすと、それを追いかけるように虎於くんが顔を覗き込んでくる。
「落ち着かないって、具体的にどういう感じなんだ?」
「え?」
「例えば、こう…ドキドキするとか」
「ドキドキ……うん、するかも」
「ずっと見ていたいとか、逆に思わず逸らしたくなるとか」
「どっちも思うかも…不思議だけど」
「……ふーん」
虎於くんがニンマリと笑う。え、そんなに嬉しい?どうして?
「虎於くん、あの、どうして笑ってるの?」
「嬉しいから」
虎於くんが俺から離れて軽く伸びをする。わけがわからないまま、俺はキョトンと立ち尽くすしかない。
虎於くんがまた真っ直ぐに俺を見た。
ああ、なんて綺麗なんだろう。
「龍之介、それは恋だよ」
虎於くんの頬は少し赤くて、瞳は嬉しそうに細められて、その口から発せられた言葉は魔法のようで、まるで夢の中にいるかのような心地だった。
「龍之介は俺のことが好きなんだ」
認めるしかない。俺は虎於くんのことが好きで、だからこんなにも、彼の全てが美しく映るんだ。
彼に見惚れたままゆっくりと頷く。
虎於くんはそれを見て満足そうに笑うと、勢いのままに優しく強く抱きしめてくれた。