占い今朝のテレビの星座占いは最下位。仕事場へ送ってもらう道中も渋滞にはまり、赤信号にも何度も捕まった。
車から降りたまさにその場に水溜りがあり靴が濡れ、時間を確認しようと画面を付けたスマホの充電はまだ午前中にも関わらず4分の1を切っていた。
占いに絶大な信頼を置いているわけではないが、ここまで不幸が続くとさすがに「今日は運が悪いな」と思ってしまう。
ようやくスタジオに到着し、これから仕事が始まる。ここからは何の言い訳もきかない。出来栄えはそのまま俺の実力だ。よし、気合い入れるぞ。
楽屋へ向かう廊下。密かに一人決意を新たにしていると、背後から声がする。
「狗丸!」
その声に心臓が大きく高鳴る。
緊張する……はずだった。いつもならそうだった。でも今日は違う。
振り返る。八乙女が手を振りながらこちらへ歩いてくるのが見えた。距離が近づくにつれて、彼の笑みはゆっくり穏やかに深まっていく。
思わず俺も頬が緩む。緩んで、緩んで、緩んで、何もかも全部上手くいくような、そんな気持ちになった。
だって、ほら、たったこれだけで。
会えただけで、もう、世界で一番幸運だ!
*8️⃣*
今朝のテレビの占いで狗丸の星座が最下位だった。今日は確か同じスタジオだったはずだから、様子見に行ってやろうかな。
廊下で狗丸の背中を見つける。名前を呼ぶとすぐに振り返った。
「うっす!お疲れさまです!」
ああ、なんだ。心配いらなかったらしい。
世界で一番、幸せそうな顔してる。