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    李坂怜菜

    @jlHt3jBv2ElSdJ5

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    李坂怜菜

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    つなとら。付き合ってる2人が一緒に桜を見る話。

    桜の木の下で「わあ!虎於くん見て!」
    龍之介が興奮した様子で何かを指差す。その先を追うと、そこには大きな桜の木があった。満開と言って差し支えない、見事なピンク色が広がっている。
    「綺麗だな」
    「ね!もっと近くで見てみようよ」
    龍之介は俺の手首を優しく取って歩き出す。手を繋ぎたいと思ったが、外でそれをする勇気はなかった。

    花見客で賑わっていたら引き止めようと思ったが、幸運にも俺たち以外誰もいなかった。桜の真下で立ち止まり、龍之介は感嘆の声を上げる。
    「すごいね、本当に綺麗」
    「そうだな」
    「今日は少し風があるから、桜吹雪もすごい」
    確かに龍之介の言う通りで、ハラハラと舞い散る花びらが美しさを際立たせていた。
    だがそれは同時に、花が終わりに向かっていることを意味している。地面に視線を落とすと、既に散ってしまった花びらたちがそこに佇んでいた。
    儚さに美を感じるのは自然なことだ。俺だって異論はない。それでも、滲む寂しさを無視できるほど楽観的ではいられない。
    「あ」
    龍之介が声をあげる。不思議に思い視線を上げると、龍之介はもう一度「あ」と言いながらこちらへ手を伸ばしてきた。
    「ちょっと動かないで」
    彼の手はそのまま俺の頭へ向かい、髪に優しく触れた。ほんの一瞬の感触はすぐに離れていき、物足りなさを押し隠しながら俺は首を傾げる。
    龍之介は終始優しい笑みを浮かべ、指先にあるものを見せてきた。
    「花びらが乗っかってた」
    小さな薄ピンク色のそれを、指先から手のひらに移してもう一度差し出してくる。
    頭に乗った花びらを取ってもらったのは初めてだった。
    それもそうだ。俺より背の高い人と、こうして寄り添いながら桜を見ることなんてこれまで一度もなかったのだから。
    「龍之介」
    名前を呼ぶ。龍之介は笑顔で「ん?」と続きを促してくれる。
    「来年も、桜、一緒に見たい」
    「……虎於くん」
    龍之介は手の中の花びらをヒラヒラと落としながら急に神妙な顔をした。
    背筋が冷たくなる。ダメなことを言ってしまったかもしれない。どうしよう。今からでも撤回を、
    「虎於くんってもしかしてエスパー?」
    「え?」
    「俺もちょうど、同じこと言おうとしてたから」
    優しく手を繋がれる。先程「外だから」と躊躇ったのがバカみたいだ。
    自然と頬が緩む。
    根拠なんて一つもないが、来年の春もきっと一緒にいられるのだろうと、そう思った。
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