神に祈る神に祈るほど頑張る前に、諦めて目を逸らすような人生だった。
ŹOOĻとして活動するようになってからは、欲しいものがあれば努力をして手に入れている。それが叶うだけの環境が整っている。だから、“神に祈る”という行為があまり日常的とは言えなかった。
龍之介に恋をするまでは。
例えば番組で共演するとして、同じ空間にいても俺達は別のグループだ。そう簡単に近寄れるわけではない。
ましてや俺からの一方的な好意を悟られるわけにはいかない。だから、露骨に声をかけることも絶対にしてはならない。
今日も今日とて、そんな絶妙な距離感を残念に思いながらもどこかホッとしていた。
番組収録の休憩中、少し先にTRIGGERの三人が見える。楽しそうに談笑している。ここからだと、龍之介はちょうど横顔が見える位置だった。
思わず見つめてしまう。かなり距離があるからまさか気付かれるわけがない。それに、気付かれたら変に思われる。だからこのままでいい。
……それなのに。
龍之介がこっちを見てくれたらいいのに。そんなことを、願ってしまう。人間とは浅はかで罪深いものだと、心の中でため息を吐く。
もうすぐ休憩が終わる。このまま届かないのか。どうか、どうか、神様。
「………あっ」
思わず声を上げてしまい慌てて喉に力を込める。
龍之介が、唐突にこちらを振り返ったのだ。
目が合って、彼はほんの一瞬驚いたような顔をして、それから嬉しそうに微笑んだ。
ああ、なんだよそれ。なんでそんな、俺に都合がいいことばかり起こるんだ。
もしかしたら神様はいるのかもしれない、なんて、本気で信じてしまいそうになる。
もしいるなら、一つだけお願いがある。あの人を好きでいること、許してくれないか。なあ、神様。