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    李坂怜菜

    @jlHt3jBv2ElSdJ5

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    李坂怜菜

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    楽トウ。記念日を一緒に過ごしたい8️⃣と様子のおかしい🐶。8️⃣視点。

    記念日とすれ違い「狗丸、今度の月曜日空いてるか?」
    狗丸はビクッと肩を震わせた。いつまで経っても俺と話すことに慣れないようで、毎回怯えられてしまう。一応恋人なんだけどな、どうしたら慣れてくれるんだろうか。
    「げ、月曜…?」
    「ああ。仕事終わりでも良いんだけど」
    「えと…そうっすね、仕事終わりなら」
    「了解。じゃあ空けといてくれ。終わったら迎えに行くから」
    「え!?いや、む、迎えはいいっす」
    「なんでだよ」
    「なんでって……」
    困り果てたように俯いてしまう。もしかして俺と二人で帰るところ誰かに見られたくないのか?シャイにもほどがある。そんなタイプだったのか、意外だな。そんなところも可愛いけど。
    「狗丸、何か食べたいものあるか?店予約するよ」
    「予約!?そ、そんな大層なことしなくても」
    「なんだよ、普通の居酒屋の方がいいか?あ、家で飲むのもアリだな。二人きりが良いから狗丸の家になっちまうけど」
    「い、家!?」
    「そろそろ呼んでくれてもいいんじゃねーかと思ってたところだよ。どうする?」
    「ええぇぇぇぇ……?」
    なんだかものすごく困惑させてしまっているようだ。なんだよ、3ヶ月記念日を一緒に祝いたいだけなのに、どうも上手くいかないな。
    「狗丸、俺と過ごすの嫌か?月曜忙しい?」
    「そ、そういうことじゃないけど、なんかちょっとおかしいというか」
    「他に用事があるなら別にいいよ。絶対に当日じゃなきゃいけないとは思ってないし、記念日をどれくらい重視するかもまだ話し合ってないしな」
    「………記念日って、なんすか?」
    「え?」
    「いや、だからその、月曜日ってなんかあったっけ……?」
    しばらく無言で見つめ合う。狗丸の表情がどんどん険しくなっていく。俺もきっと同じ顔をしていただろう。
    なるほど、3ヶ月記念日は気にかけないタイプなんだな、狗丸は。
    「悪かった、ちゃんと言わなくて」
    「いや、それは全然……誰かのお祝いっすか?あれ、でも二人きりが良いってどういう」
    「俺たち付き合ってから3ヶ月経つんだよ。だから一緒に過ごせたらなと思っただけだ」
    「…………………」
    「…………………」
    「…………………」
    「…………………」
    「……いや何の話!?」
    長い沈黙の後、狗丸が突然大声を出し俺の胸ぐらを掴んできた。あまりの必死さに思わず後ずさる。服の襟口を掴まれているが、傷付ける意図は全くないと分かる手加減だった。
    「付き合って3ヶ月!?誰と誰の!?」
    「俺と狗丸の」
    「はあ!?」
    「え、違ったか?4ヶ月だっけ?」
    「そういうことじゃない!!」
    顔が真っ赤だ。心なしか目も潤んでいる。上目遣いに睨み付けられて、うっかりキスをしてしまいそうになる。危ない。
    「お、俺がいつ、八乙女と、つ、付き合っ、い、いつ!?」
    「だから3ヶ月前」
    「具体的にどのタイミング!?いつ!?なんの時!?」
    「おいちょっと待て、まさか、付き合ってると思ってたの俺だけか!?」
    「そうだよ!俺知らねぇよそれ!」
    「はあ!?」
    ようやく合点がいくと同時に、あまりの衝撃に眩暈がした。どうりでこの3ヶ月、近寄っても困った顔をされるばかりで何も進展がなかったわけだ。
    いや、待て。おかしい。確かに3ヶ月前、俺は狗丸と付き合うことになったはずだ。それなのにどうして認識の齟齬が起こったのだろう。
    「あんた、俺が“付き合うか?”って聞いたら“いいっすよ”って言ったじゃねぇか。まさか嘘だったのか?」
    「え、まさかあの時のやり取り!?あんなのただ冗談で言われただけだと思ってた……!」
    「俺が冗談でそんなこと言うわけないだろ!」
    「いやそれはそうなんだけど……!」

    3ヶ月前、狗丸が俺のことをたくさん「カッコいい」と褒めてくれたことがあった。「八乙女が恋人だったら絶対幸せっすよ」と頬を染めながら笑うもんだから、その顔をこれからもずっと俺だけに見せてほしいと思って、ダメ元で「じゃあ俺と付き合ってみるか?」と聞いたんだ。そしたら驚いた顔した後に今度は空元気みたいな笑顔で「いいっすよ、それめちゃくちゃ嬉しいな!」って返してくれた。
    本気だと思われていなかったのもショックだし、狗丸の返事も冗談だったと知って言葉が出ない。

    「狗丸」
    「いや、その、えと、ご、ごめん、なさい」
    「俺も悪かった、確かにちゃんと告白してなかった」
    「何度か“好き”って言ってくれてたけど全部冗談だと思ってました」
    「いや、ちゃんと伝えられなかった俺が悪い。あんたは何も気に病まなくていい」
    「………あの、八乙女は俺のこと、本当に好きなんすか」
    「ああ、好きだよ」
    「うっ」
    「なんだ急に胸を押さえて」
    「突然のイケメンオーラに心臓が耐えられなくて」
    「はは、なんだそれ」
    思わず笑みが溢れる。この人のことが好きだなと、改めて思った。
    「狗丸は俺のこと好き?」
    「………………」
    「遠慮するなよ。本当のことが知りたい」
    「………す、」
    耳まで真っ赤の狗丸が必死に答えようとしてくれている。それだけで、十分に返事は伝わった。
    「すき、です」
    「そっか。よかった」
    「……だ、大体!突然好きな人から“付き合ってみるか?”なんて聞かれて、お、俺めちゃくちゃ動揺して、俺だけ本気だなんて絶対知られたくないから必死に笑顔崩さないように頑張って返事したのに!本気かよ!なんでだよ!」
    「おお、潔い良い逆ギレだな」
    「好きだよ!ずっと!3ヶ月記念日お祝いしたい!肉食いたい!」
    「分かった分かった、肉な。じゃあ美味いステーキの店予約しとく」
    「良いのかよ、記念日変えなくて。厳密には今日からになっちまったのに」
    「どっちだっていいよ。狗丸と一緒にいられるなら」
    今日も3ヶ月前もどっちも記念日にしよう。
    そんな言葉を口にしながら、未だに真っ赤な顔をしている愛しい恋人に、どのタイミングでキスをしようか密かに考えていた。
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