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    李坂怜菜

    @jlHt3jBv2ElSdJ5

    つなとら、楽トウの文章を書いたり書かなかったりします。文章の転載は使用料を頂きます、ありがとうございます!(無断転載は請求に伺います🫶)
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    李坂怜菜

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    つなとら。🐯が🐉の家に遊びにくる話。映画観たりご飯食べたり。🐉視点。

    愛情パスタ今日は一日オフだ。
    同じく一日予定を空けてくれた虎於くんを家に招いて、朝からのんびりと過ごすことにしている。
    楽と天は仕事で不在だ。夜に戻る予定で、もしかしたら気を利かせて遅めに帰宅するかもしれない。
    「お、お邪魔します」
    ぎこちなく会釈をする虎於くん。うちに遊びに来るのは初めてだから緊張するのも無理はない。なんだか可愛くて思わず笑うと、虎於くんはムッとして視線を逸らしてしまった。うん、その仕草も可愛い。

    まずは映画を観ようということで、事前に決めていたアクション映画を準備する。時計を確認すると10時だった。ここから2時間くらいで映画を観終えたら、ちょうどお昼ご飯の時間だ。
    「昼食はどうするんだ?」
    「俺が作るよ。映画終わってから準備することになるんだけど大丈夫?」
    「ああ、もちろん。ありがとう」
    「どういたしまして」
    そんなやり取り一つ取っても幸せを感じる。大事な人と一緒に過ごすのって、こんなにも素敵なことなんだ。
    「よし、じゃあ再生するよ」
    飲み物を用意し二人でソファーに並んで座って、物語の世界へ旅に出た。

    映画を再生して一時間ほど経った頃。
    物語上では一つの大きな真実が明かされ、それに伴い主人公達が決意を新たにするシーンを迎えていた。息を呑む展開。これから強大な敵に立ち向かわねばならない、そんな緊迫した空気だ。
    俺も虎於くんもジッと画面に釘付けになっている。しばらくは身動き一つ取らず集中していたが、ふとある時から、虎於くんがほんの少し身じろぎをするようになった。胸元やお腹の辺りに手をやっているのも気になる。お手洗いかな?と思って声をかけるが、それは違うらしく首を横に振られた。特に苦しそうなわけではないから、不思議に思いながらも俺は納得して再び画面に目線を戻した。
    その次の瞬間。

    ぐうぅぅぅぅ

    「………ん?」
    虎於くんの方から音がして、思わず再び顔をそちらへ向けてしまう。虎於くんは両手で顔を覆って項垂れていた。
    「悪い……」
    「いや、そんな謝ることなんて何も……虎於くんもしかしてお腹空いた?」
    「鳴らないように我慢してたのに……!」
    心底悔しそうに呟いて大きくため息をつく虎於くん。先ほどの不思議な挙動は、お腹が鳴らないようにするためのものだったらしい。
    なんだか堪らない気持ちになって、俺は映画を一時停止して勢いよく立ち上がる。虎於くんは驚いた様子で顔を上げ、それから慌てて俺の手首を掴んで引っ張った。
    「龍之介大丈夫だ、あと一時間くらいだろ、そのくらい我慢できる」
    「いや、ここからきっと手に汗握る展開だよ。空腹に邪魔されたらもったいないよ!」
    「でも」
    「すぐ作るから待ってて」
    「じゃあ俺も何か手伝いを」
    「大丈夫!なんならお菓子摘んで待っててくれていいよ!何かあるかな、探してくるね」
    「龍之介、勘弁してくれ……!」
    虎於くんは両手で俺の手を強く握り、そこへおでこをくっ付けてきた。その姿は“懇願”とでも言うべきか。俺は空いている方の手で虎於くんの頭を軽く撫でる。
    「俺もお腹空いてきちゃったから、映画の後半は少し待ってくれる?ご飯食べ終わってからでもいいし、なんなら食べながら観るのもいいかもね」
    「……ああ、分かった。待ってる」
    虎於くんは照れくさそうに笑って、ゆっくりと手を離してくれた。

    今日の昼食はパスタ。お腹を空かせて待っている虎於くんのために少しでも早く仕上げたいが、焦って味が落ちては元も子もない。正しく、丁寧に、想いを込めて。
    お腹いっぱい食べてほしい。映画が終わるまで我慢しようとしてくれた虎於くんの優しさに応えたい。そして何より、素直に言い出せなかった事実をちゃんと受け止めなければ。完璧じゃなくたっていいんだよって、いろんな形で伝えたい。



    「………気持ちは、嬉しいんだが」
    「ごめん……」
    「いや、龍之介が謝ることでは……うーん」
    「ほんとごめん……!」
    テーブルの上には完成したパスタが並べられている。大盛りが2皿。……と、更に大皿に盛られて一皿。良いサイズが見当たらなくて追加でどんぶりに盛られた分が一皿。
    5人前はあろうかという量のパスタを前にして、俺はひたすら謝り倒すしかなかった。
    「作りすぎちゃった」
    「ああ、それは間違いないな」
    「たくさん食べてほしくて」
    「それも分かってるよ」
    「どうしよう…こんなにいらないよね、ごめん」
    とにかく少しでも減らさねばと、フォークを握りしめてパスタの山を睨む。大丈夫、余ったら全部俺が食べる。虎於くんに無理はさせない。
    すると、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきた。虎於くんを見ると笑いを堪えるように口元に手を置いていて、俺と目が合うと観念したように今度は大きな声で笑った。
    「ちょっと安心した」
    「え?」
    「俺ばっかりカッコ悪いんじゃ、イヤだから」
    これでお互い様だな。そう笑顔で言う虎於くんが、キラキラと輝いて見える。カッコ悪くなんてないし、カッコ悪くてもいいよ。俺はどんな君も大好きだよ。
    「龍之介、たくさん作ってくれてありがとう」
    「虎於くん…」
    「さっきの音で分かったと思うが、俺は今ものすごく腹が減ってるんだ。驚くほどたくさん食べられる」
    そう言いながらフォークを手に取り、それから優しく微笑む。
    「全部美味しく頂くよ。心配するな」
    そのために菓子も摘まず待ってたんだ。自信ありげな表情でそう言われると、俺もなんだか全部食べられるような気がしてきた。
    「ありがとう、虎於くん」
    映画はひとまずお預け。
    パスタがなくなるまで、幸せなこの時間を存分に楽しむとしよう。
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