雨「わー、降ってきちゃったね」
俺の嘆きに虎於くんは小さく「ああ」と返してため息をつく。一緒に見上げた空は、灰色の雲に覆われて泣いていた。
雨予報が出ていたことは知っている。ただ、予報では1時間後から降り始めるはずだった。もう少しだけ持ち堪えてほしかったな。
今日は虎於くんと同じ現場だった。仕事終わり、偶然にもそれぞれのマネージャーの車が停めてある場所が一緒で、せっかくだからと二人で向かうことになった。
そこで問題が一つ。
訳あって現場付近の駐車場が使えず、停めてある場所まで少し距離がある。そこまで徒歩で向かう必要があるのだ。
困った顔の虎於くんを横目に、俺は自分の鞄の中へ手を入れる。
「はい、これ」
中から折りたたみ傘を取り出すと、虎於くんは驚いた顔で何度かパチパチと瞬きをした。
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