部屋の中に化け物がいる。
廊下の方から音が聞こえた。くすくすと笑うような音。廊下にいるのだとばかり思った。きっとみんなそう思っていた。だから彼女は廊下を見に行ったし、そこをやられたのだ。中にいた。中にいる。
勇敢なお嬢さん、木刀を持ったお嬢さん。血を流しながらも確かにこらえていた。意識を失いつつも、私たちに警告すらをも残したのだ。煙が出ている。廊下から煙が。廊下には出られない。煙などなくともどう出ろと言うの、だってあれがいる、扉の前にあいつがいる。彼女の返り血を浴びて初めて見えるようになったあいつが。透明な化け物が。
逃げるしかない。
私は確かにそう思った。逃げるために振り返った背後に青年が立っている。
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