車のキーを手に取り、エンジンをかける。
そして駐車場から車を発進させた。
道中、車内では音楽をかけた。
よく聴くアーティストのアルバムで、ドライブデートといえばこの曲だろうと直感的に思った。
待ち合わせ場所に着くと、堅作は携帯を片手に辺りをキョロキョロと窺っていた。
そして、俺の姿を見つけるなり嬉しそうに手を振る。
その仕草が妙に可愛く見えて、思わず顔が綻ぶ。
「待ったか?」
「や、今来たとこだ」
なんてやり取りが、ベタな恋人みたいで何となく照れてしまう。
堅作も同じように感じたようで、お互い恥ずかしくなって、しばらく無言のまま立ち尽くしていた。
先に沈黙を破ったのは俺だった。
「……ぃよし、じゃ行くか」
「うん」
堅作の返事を聞いた後、俺は助手席のドアを開け、中に入るように促す。
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