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    なつひ

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    なつひ

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    あかつき高生時代の話
    そんなつもりはないけどちょっと守の性格が悪いかも。練習で書きました。未完です。何でも許せる方のみご覧ください。

    バレンタイン主←守「いやー、オレ三つもチョコもらっちゃったよ! これがモテ期ってやつ? モテる男はつらいな~」
    「オイラはマネージャーがみんなに配ってた義理チョコ一つでやんす……」
     まるで天国と地獄、そんな正反対の表情で話している二人が部室ドアの目の前にいた。
     何がつらいのかまったく分からない。だってキミの頬はそんなに緩んでいるじゃないか。否、本当につらいわけではないことくらい猪狩にも分かっている。だからこそ苛立ったのだ。

     苛立つ? ボクが? この、間抜けな顔をして、三つのチョコレートは誰からもらっただの、手作りだからって味の心配していただのを隣の眼鏡の友人に言って聞かせている——その友人は悲しむことに忙しくて全然聞いていないようだが——コイツに?
     確かに普段からこの男にイライラさせられることは多々ある。まず性格だ。抜けているけれど野球に対してはひたむきで、寝坊で遅刻することが数回あったが誰よりもやる気がある。そのやる気に実力もついてきていて、一般入試で入学、入部してきた割に一軍に上がるのも遅くなかった。チームスポーツに欠かせないムードの良さもあり、センスも悪くない。ボクのライバルだと言っても問題ないだろう。もちろん、すべてにおいて僕の方が上回ってはいるが。
     とにかく、この男はボクのことを苛立たせるのだ。その度に自問自答を繰り返し、何が原因なのか探ろうと思ってもうまくいかない。だって——今のように、結局は褒めたことになってしまうのだ。本人に言うつもりはないが、コイツがこのまま努力を続けていればプロだって夢じゃないだろう。ボクと勝負をすることだってあるかもしれない。いいことじゃないか。と、こんな風に。じゃあなぜボクはこんなに腹立たしい思いをしているんだ?
     思考がまとまらずグルグルと同じようなことを思っているとドア前の二人を見ていたことに気づかれたようで、パワプロと目が合って練習着のボタンを外す手が止まる。
    「なんだよ猪狩、さっきからこっち見て」
     とっさに言葉が出なくて、何を言うべきか考えあぐねて口を開けたり閉じたりしているうちに何を勘違いしたのかパワプロがそのまま続けた。
    「どうせ猪狩は三つなんかじゃなくてたくさん貰ったんだろ。オレたちのことを憐れんでたとか?」
    「そりゃあたくさん貰ったよ。今日一日じゃ全部は持ち帰れないかな」
     そうじゃなくて、そんな話がしたいんじゃない。ただ、何を話したいのかは自分でも分からない。
     やっぱりなー、といつもの不満があるときのじーっと睨むような目で見られて、またイラっとした。なんでキミがそんな顔をするんだ。怒りたいのはボクの方なのに。でもこの怒りの理由が分からないから伝えようがない。後ろで「こうなったら何でもいいからチョコがほしいでやんす! それだけ量があれば猪狩くんのを奪っても気づかないでやんしょうし……」と騒ぐ矢部がうるさい。何を言いたいのか分からないけど何か言わなくては。
    「いいんだ、オレはそんな誰から貰ったのか分からなくなる程の数がなくたって、一生懸命作って渡してくれた三つを大切にするよ」
     じゃ、また明日。帰り道のコンビニで矢部くんにチョコ買ってあげるから泣き止んでよ。と勝手に話をまとめて矢部と二人で出ていってしまった。
     
     残された猪狩はまだ着替え終わっていないことに気づき、慌てて制服に着替えて荷物をまとめた。先ほど言ったとおりに貰い物のチョコレートが多く、上から押さえつけるようにして何とかリュックに詰めた。入らなかった分はロッカーにしまっておこう。完全下校時間まであと十分を切っている。早くしないと部室に鍵をかけられてしまう。

     少なくなった校舎からの明かりを背に受けて校門を出ると、隅に座っていたのか女子生徒二人がぱっと立ち上がった。猪狩は顔にこそ出さないが、内心またかとうんざりした。
     毎年この日はいつもこうだ。朝の下駄箱、各休憩時間、放課後部室までの道すがら、部活終わりの下校のタイミング。もちろん気持ちは嬉しいし、選手としての自分に期待してのことなら尚のことありがたい。でもこの日のイベントが弟の誕生日だけだったら素直に今日を喜べるのに。
    「猪狩くん、練習で疲れてるのに呼び止めちゃってごめんね。ちょっといいかな?」
     ああ——。

     お決まりの返答。ありがとう、でも今は野球に専念したいしたいんだ。そう断ると、三割くらいは泣く。正直なところ、不思議でならない。ボクはキミのことを知らない。キミはボクのことを知っているんだろうが、それはあくまで遠巻きに見て知った気になっているだけであって、ボクと直接関わりを持って人となりを理解したわけではないのになぜ泣けるのだろう。告白する相手はもっとよく知った相手にした方がいいのではないか。それこそOKか断られるか分かるくらいの。
     人間性といえばパワプロだ、アイツのことは入学してから何だかんだ関わりがあるから知っている。さっきだって帰りに矢部にチョコレートを買ってやると言っていた。いい奴なんだ。人付き合いが得意とは言えないボクにも積極的に声をかけてくれて、今では時間が合えばうちの球場で一緒に練習をすることもある。友達ってやつなんだろう。
     家までの道を歩きながら、最近ずっと考えていることを懲りもせず繰り返す。そうだ、ボクがパワプロのことを知っているくらいの仲であれば告白してもいいかもしれない。あれ、でもボクが告白したらパワプロはなんて言うだろうか。
     道端で立ち止まる。近所の家から夕飯の匂いが漂ってくる。今夜はカレーだろう。
     あれだけチョコレートごときではしゃいでいたんだ、お菓子どころか告白となったら飛び跳ねて喜ぶかもしれない。そうしたらボクとパワプロは恋人同士ということになるのか。
    でも相手がボクでもいいのか?

    --------------
    後の流れとしては、苛立っていた理由(=自分はパワプロのことが好き)が分かってしまって「キミのことなんて好きなわけないだろ!」と顔を真っ赤にして虚空に向かって声を荒げるけど、その足取りは何となく軽い って感じです。思ったより守が悩み続けてしまってうまく終わらせられませんでした。いつかきちんと終わらせたいです。
    ありがとうございました。
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