君と一緒に 地獄のような場所で雁字搦めになっていた俺を、彼女は引っ張り上げてくれた。誰かに助けを求めて良いのだと。頼って良いのだと。……救われて、良いのだと。
だからこうして自分は現実に帰ってくることが出来て、この足で立ち上がろうと思うことが出来たのだ。
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リドゥから帰還し、病院でのリハビリや手続きを終え、帰宅部の仲間たちと現実での再会を果たしてからしばらく——鐘太は一人きりの家で暮らしていた。事件の後で職は失ってしまったが、結婚のために貯めていた貯金が残っている。しばらく食うものに困ることはないだろう。ずっとこのままでは居られないけれど。
食事は自炊を心がける。幸か不幸か時間だけはあるのだ。鐘太にとって悩む時間も増えてしまうのが困るところだが。
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