交遊交遊
どうも、その日はとても居心地が悪い日であった。行きなれていた店ではあったが、まるで初めて入ったかのような違和感を感じていた。受付で時間を指定し、ロッカーに荷物を預け、ロビーへと足を運ぶ。ロビーへと行く間にある個室からは絶えず男の喘ぐ低い声が聞こえてはいたが、どうもそそられなかった。耳を塞ぎたい気分に陥るが、それを振り払い歩みを進める。ロビーには点々と人は居たが、誰も彼も1人だけのようであった。誘い待ちなのだろう。だが、今日は気が乗らない。人に話しかけることすら億劫であった。
壁へと背を持たれかけた。煙草へと火をつけ、深く吸い込む。人々の舐め回すような視線が痛い。まるで全人類から誘いを受けているような錯覚さえ覚える。鼻にこびりつく煙草の煙の香りと、甘ったるい香水の香りと、それでは打ち消すことが出来なかった精の香り。それらが混ざりあった不快な香りに思わず顔を顰めてしまう。
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