ばらばらになったマンパガネット
旅の途中
ガネットは、一人で人助けの旅を続けていた。
小さな町や村を巡り、治癒魔法や結界術で人々を守り、支えた。
その笑顔の裏には、消えない孤独があった。
──もう、誰かに頼ることはできない。
それでも誰かの役に立てるなら、と歩き続けた。
心情
夜、焚き火のそばで、古びた手帳を開く。
そこには、かつて仲間たちと交わしたくだらないメモや、作戦会議の走り書きがあった。
「まだ──忘れられないのか」
独り言に、答える者はいなかった。
最期
寒さ厳しい冬の村。
魔物から村人を守るために結界を張り続け、体力も魔力も限界を超えていた。
吹雪の中、村人たちが無事に避難できた瞬間、
ガネットは崩れるように膝をついた。
誰にも看取られず、ただひとり、白い雪に埋もれていく。
手帳は、彼の胸の中で、そっと静かに閉じられた。
---
アンバール
旅の途中
アンバールは剣を手に、放浪していた。
小さな戦闘、傭兵稼業、命を賭けた無謀な依頼。
戦いしか自分には残っていないと知りながら、
それでも剣を手放すことはできなかった。
心情
傷を負い、草むらに倒れた夜。
夢に、あの日、仲間と笑い合った拠点が出てくる。
「……オレ、まだ……」
誰にともなく手を伸ばす。
でも、掴めるものはなかった。
目を覚ますと、ただ冷たい夜風が吹きつけるだけだった。
最期
ある無名の戦場。
多勢に無勢の中、アンバールは最後まで剣を振るい続けた。
満身創痍、血まみれになりながら、
彼はただ一つの名前を呼んだ。
「……ガネット……」
誰にも聞かれることなく、その声は風に消えた。
剣を手にしたまま、彼は泥の中に倒れた。
---
カイヤー
旅の途中
カイヤーは、裏社会で暗躍しながら生き延びていた。
正義も悪も関係ない。
取引と策略、そして冷たい理屈だけを頼りに、
裏の世界を渡り歩いていた。
心情
取引がうまくいった夜、ふと空を見上げた。
「……あいつら、まだどこかにいるのかね」
懐から取り出した、割れた古い金貨。
仲間たちと初めての大きな依頼を成功させたとき、ガネットが皆に配ったものだった。
金貨を指先で弾き、苦笑する。
でも、寂しさは消えなかった。
最期
密会中、裏切りに遭う。
逃げ場はない。
刺客たちに囲まれた路地裏で、
カイヤーはただ一言だけ、呟いた。
「……まぁ、悪くねぇ人生だった」
鋭い刃に貫かれ、音もなく崩れ落ちる。
手の中には、最後まで離さなかった金貨だけが残されていた。
---
ペリード
旅の途中
ペリードは、誰もいない拠点を守り続けていた。
誰かが帰ってくると信じて、庭の手入れをし、訓練場の修繕を続けた。
季節は巡り、人の気配は消え、草木だけが生い茂った。
心情
夜明け前、寂れた拠点のラウンジで、ぼんやりと座る。
カップの中の水は、飲みかけのまま冷えていた。
「……みんな、元気でやってるか」
返事はない。
それでも、ペリードは微笑んだ。
信じたかった。
たとえ、自分がここで朽ちても、誰かが生きていてほしかった。
最期
老いた体に無理を重ね、最後の最後まで、拠点を守り続けた。
ある日、倒れた訓練場の屋根を修理しようとして、梯子から落ちた。
動かない身体で、空を見上げる。
かつて仲間たちと見上げた、あの透き通る青空。
「──ただいま」
誰にも聞かれない声と共に、ペリードは静かに目を閉じた。