おつかれの日 帰ってきたときには情けねー声出してたから、ウゼェしどーしてやろうかと思ってたっつーのに。オレ様とチビを腕の中に引きずり込んで、それからどうもしねェ。情けねー声でオレ様とチビを呼んだから、わざわざ近くに来てやったのに。
「漣、タケル」
その後も何回もただそんだけ、名前を呼ぶだけで、そのたびにちょっと腕に力込めて額に口を寄せたりとかそんぐれーのことしかしない。
胡座かいてへたり込んだらーめん屋にチビと二人で抱え込まれてるからすげェ狭い。暑い。三人分……あちこちくっつく。そんで何もしねー。
「円城寺さん、疲れてんのか?」
ンなの聞かなくてもわかんだろ。でもらーめん屋はそうとは言わねー。ヘナチョコのヘロヘロすぎてンな簡単なことも言えねーらしい。
「なんか、して欲しいこととかねーか? 俺とコイツができることならなんでもする」「ありがとうな、タケル、漣。その気持ちだけで嬉しい……もう少しこのままでいさせてくれるか?」
「オレ様は何も言ってねぇけどォ……」
「じゃ、オマエどっか行くか?」
「ハァ? そうとは言ってねェ。……らーめん屋がどうしてもって言うならここに居てやるけど」
「けど、何だ」
「……つーか」
横目でチビがうっとうしい目線をオレ様に向けてくる。言いたいことあるんだったら言えばいいだろうが。……別にオレ様は、……。
「ん」
ぐるぐる考えてたららーめん屋がまたオレ様の頭に口をくっつけた。なんの意味があんだ、それ。頭がくすぐってえ。んでチビの方にも同じこと、してる。……き、キス、じゃねーか。頭にキスしてどーすんだ!? そんなんでその疲れてヘロヘロがどーにかなんのか!?
「おいらーめん屋!」
「うわ、どうした漣。嫌だったか?」
「……い、嫌とかじゃ、ねェし……じゃなくて……そういうんじゃなくてェ、え、エロいこと、しなくていいのかよ」
「えっ、エロ……って漣、それってどういう」
「ふっ」
「何、笑ってんだチビ」
「違う、俺もさっき同じ意味で聞いたつもりだったから……」
隣でチビが小刻みに肩を揺らして笑ってやがる。らーめん屋が離さねーせいで、そういうチビと密着させられてるから、チビが揺れてんのが直接伝わってきてこっちまで笑ってるみてーな気分だ。
らーめん屋、さっきオレ様の声にびびったのにオレ様とチビを掴む力は全然緩んでねぇ。ヘロヘロのくせに。ゴーヨクで笑える。
「円城寺さん、疲れてるんだろ? 何でもするぜ。エロいこと、とか」
「何されてーのか今だけトクベツに聞いてやるからさっさと言え」
ほんとは胸ぐら掴んでやりてーが、らーめん屋とチビのせいで身動き取れねーからしょうがねー。ほとんど真上のらーめん屋の頭を見上げて、睨むだけで許してやる。ごちゃごちゃめんどくせーことやってんのが悪い。
「ええと……そうだな」
横目で見たら、チビも睨んでやがる。さすがのらーめん屋もこれで観念しただろう。
生唾飲み込んで、オレ様とチビを見下ろす緩んだ目に、ギラついたものが少し戻ってる。