はチョロい らーめん屋はチョロい。全部顔に出てる。その鼻の下伸ばしたマヌケヅラに。
「さわんな」
「わかってる! もちろん邪魔はしない! ただそっちにスマホが……」
「スマホだぁ?」
チビが一瞬布団から立ち上がろうとした。が、思い直したのか、浮かせた体重が戻ってくる。体勢が変わった分、さっきよりもチビの体重がこっちに寄りかかった。
チビは小せぇから、軽い。だが変に動いたせいで体勢が不安定だ。その背中に腕を回して、オレ様の上に乗せるように抱き寄せた。
そんだけでらーめん屋が生唾を飲み込んだのが見えたし、聞こえた。太い喉が笑えるくらいはっきりと動いてた。らーめん屋はチョロい。
「スマホで写真取るのは、ダメだ。円城寺さん」
「動画は……」
「もっと嫌だ」
チビにそこまで言われても畳の上に置いたスマホを取ろうとして中途半端に手を伸ばしている。らーめん屋はチョロい上に往生際が悪い。
チビと二人で見張ってるから、スマホなんつーのは取れないだろうが……その往生際の悪い手が空中をうろついている。落ち着きなく腰浮かそうとしてるのはいいとして。
「ええと……それじゃ、さっきのはもうして見せてはくれないのか?」
「らーめん屋にその気があるっつーのならな」
「写真も動画もナシだ。こっち、見ててくれ」
「わかった! 目に焼き付ける!」
「そういうことじゃねェ」
「見てるだけじゃなくて、その気になって欲しいんだ、円城寺さん」
今日はなんにもしねーとかダルいこと言わずにな。らーめん屋がそういうめんどくせーこと言うから、わざわざオレ様とチビがその気にさせてやろうつってんだ。
チビがオレ様の上で猫のように背中を伸ばして、ぐっと顔を近づけてくる。小せえ、柔らかい、赤い唇だ。いつもより赤くなってんのはオレ様がさっき噛んでやったから。
「オマエ、ここよだれついてる」
「知らねぇ。チビのだろ」
顔がくっつく直前の至近距離で、チビが小声で笑った。
らーめん屋が鼻息荒くしてこっち見てる。その視線をチビもきっと感じている。ゾクゾクする。オレ様の上で、チビの身体も気持ちよさそうに震えている。
らーめん屋をその気にさせるのなんか楽勝だ。オレ様とチビがこういうことして見せれば……目ェ、逸らせねーだろう。鼻息粗くして目ギラつかせて、食い入るようにこっちを見ている。股間だってもうバキバキじゃねーか。バレバレなんだよ。
……で、チビとこれして見せんの、さっきからこれで何回目だ? いい加減、手を出しやがれ。