おはようのたくさん　くすぐってぇ、まぶしい、って感じた。それに気持ちいいって。そのあとに、朝だって気付いた。
　今日はオフの日、だよな。俺も、円城寺さんも、アイツも。そういう朝に、こんな気分で目が覚める。
「タケル、漣」
　円城寺さんの低く囁く声も、くすぐってぇ。そして気持ちいい。声と呼吸が耳元や頬の上を撫でてるような感じがする。
　俺の名前を呼ぶ声も、コイツの名前を呼ぶ声も、ほとんど同じ距離で聞こえた。だから多分、今俺が腕ん中に抱えてるのはコイツの身体……ってことは、鼻先に当たってるサラサラしたものは、コイツの髪だ。
　……コイツ、寝る前は円城寺さん挟んで向こうの布団に入ってただろ。どういう寝相してんだ？　目、開けりゃどういう状況なのかすぐわかんだろうが……。
「まだ起きないか。なあ、起きないならもっとキスしてもいいか？」
「ん」
　コイツ、返事した。寝言かもしれねぇけど、喉鳴らして唸って、それから俺の胸んところに頭ぐりぐり押し付けて、まるで布団に潜り込もうとしてるみたいだった。
　でも俺は布団じゃねぇ。だからコイツは布団に潜って逃げるでもなく、ちょっと顔隠したぐらいにしかなってないと思う。
　……で、そんなことを考えているうちに、またくすぐってぇ感触が、来た。
　ちゅっ、ちゅっ、とわざとらしく音立ててる。円城寺さんが。くすぐったい、柔らかい唇の感触が、瞼とこめかみに何度も降ってくる。
　円城寺さんの口、デカくて、柔らかくて熱い。
「ん、……ん、円城寺さん、くすぐってぇ……」
　頬とか、前髪とか、あちこち。キスの音だけして、触れられてる感覚がないときは、多分コイツがされてる。腕の中でコイツがくすぐったそうに、それから気持ちよさそうに少しだけ身動ぎをしているのを感じる。合間、時々円城寺さんは小声で笑ってる。
「ほらほら、いい加減に起きろ。じゃないともっとキスするぞ」
「ん……うるせ……」
　コイツ全然起きねーな。今の、ほとんど寝言だった。寝言で拒否してる割には、ずっと腕ん中で丸まってる。そしてそんなやり取りの間にも、円城寺さんはずっと俺とコイツにキスしまくってる。されるがままだ。
　目、開けられねぇから、次どこにキスされるのかわからないのも、くすぐったい。それに……やっぱり、柔らかい感触が気持ちいい。
「タケルは？」
「……お、起きる。……けど……」
　ねむい。くすぐったくて眩しいけど気持ちよくて目が開けられないでいる。返事もままならない。次は首筋にちゅ、ちゅ、と二回キスされた。気持ちいい。頭ん中が、あったかくなる……。だめだ、二度寝しそうだ。