こしょこしょ くすぐってー……モゾモゾする。そんで熱いのは、ちょうどいい。腹の上をぐりぐりしやがってた手が離れてどっかに行って、ムカついて少し目が覚めた。薄目開けてそっちの方へ転がる。デカい熱いのにぶつかる。手じゃなくて足だ。らーめん屋の、膝。
「漣、起きたか?」
起きてねぇ。顔を覗き込まれる気配がして、うぜェから目を閉じた。らーめん屋は小声で笑った。
手、どこだ。らーめん屋の向こう側にチビが転がっていた。薄目ではっきりとは見えなかったが、チビも腹、撫でられて……。
「円城寺さん、くすぐってぇ」
「タケルも起きちゃったか。悪い悪い」
悪いと思ってなさそーな声だ。適当に言いやがって。
「悪くは、ねぇけど……でも俺もソイツも、猫じゃねぇんだし……」
やっぱチビもらーめん屋から腹を撫でられてるらしい。油断、してやがるな。覇王も腹出してオレ様にそこを撫でさせようっつーときは、最高に油断してるときだ。
「んん……」
チビはくすぐったそうに喉の奥で呻った。らーめん屋は相変わらず小声で笑ってやがる。
「手」
「ん? どうした、漣」
「らーめん屋、手。……両手、あんだろ」
らーめん屋の方にもっと転がって、膝に頭を押し当てた。昼間で、らーめん屋のアパートの窓から入ってくる光が、眩しい。オレ様のために日陰になりやがれ。
らーめん屋はやっぱり小声で笑っている。
そんで手、がこっちに伸びてきて、また腹の上をモゾモゾ撫でた。デカくて熱くてっくすぐってー……けど、オレ様は油断してねーから、チビと違って声は出さねーように我慢した。