物心つく前から、俺の未来は決まっていた。
まだ三つの世界の境界が曖昧だった時代。混沌極めた魔界を統一し、その頂点に君臨せしめた覇者─ 魔王エンデヴァーの後継者。
次世代の魔王。
生まれたばかり俺の顔を一目見た時から、親父は俺を自分の後継者とする事を決めたらしい。兄弟の中で俺が一番強い魔力を持って生まれたから。
次期魔王としての教育は幼い頃から始まった。一般教養を始め魔界の歴史から現在の各地方の情勢まで小さな頭の許容量などお構いなしの知識が詰め込まれ、体には更に魔力を高めるための訓練や戦闘技術を叩き込まれても俺の中身はからっぽだった。
同じ年頃の子どもはおろか、兄弟とすら遊んだ記憶も無い。
生まれた時から父の敷いた覇道を歩むことを強いられてきた。からっぽだった俺はそれに疑問や不満を感じる事すら無かった。
そう、あの日までは……
俺が生まれるずっと前から人間界で行方不明になっていた兄が見つかった。
その知らせを受けてすぐに俺は親父から課せられていた仕事も放り出して人間界へと向かった。
生まれて初めて親父の意に背いた。初めて、自分の意思で動いた。
赤ん坊の頃に一人、人間界に置き去りにされた兄。
たくさんの人間がいる広い世界の中で、だけども本当はひとりぼっち。
俺と同じだ。
王宮の使用人たちや魔界の民は皆、俺に良くしてくれていたと思う。
だけど彼らが見ていたのは俺じゃない。あの広い王宮でたくさんの使用人たちに傅かれいても、俺はいつでもひとりぼっちだった。
とはいえ、俺には家族がいる。お母さんも、ナツ兄も、フユ姉も…あまり会えないけれど大好きな、大切な家族だ。
だからこそ一刻も早く兄を…トーヤを迎えに行きたかった。人間界にひとりぼっちで、きっと辛い思いをしているだろう兄を救いたかった。
だから本当に驚いたんだ。
初めて会った兄は、俺と同じひとりぼっちだと思っていたトーヤは人間の隣で幸せそうに笑っていたから。
それはお母さんが俺に向けてくれる笑顔に似ていたけれど、何かが違う。家族の親愛とは別の、だけどそれに負けないくらい強くて温かな気持ちなんだと感じた。
兄は幸せだったんだと安堵したけれど、同時にひどく羨ましかった。
俺も、誰かとこんな顔で笑い合えたら……
魔界に帰ってからも俺はあの時のトーヤの笑顔が忘れられずにいた。
人間界でかけがえのない大切な人を見つけたトーヤ。
あの世界でなら…俺も見つけられるだろうか。
からっぽなはずの俺の中に次々と湧き上がるこの思いは何だろう。
魔力を使った後のように体が火照っている。その熱が頭に登ってそのまま噴き出してしまいそうな、ともすれば今すぐ走り出したくなるような、不思議な気持ちだった。
だけどもう、この気持ちには逆らえない。
それからは自分でも驚くほどの早さで仕事を片付けた。その日のうちに荷物をまとめて旅立つ俺をお母さんたちは心配そうな、だけどどこか嬉しそうな笑顔で見送ってくれた。
からっぽだった俺はこの日、親父が敷いた道の外へと踏み出した。
この後、持ち前の天然さと世間(?)知らずからいきなり荷物を盗られて村の広場で星を眺めていたところを善良な村人出久くんに拾われ、そんなお人好しの幼なじみを勝己くんは素性も知らねぇやつをホイホイ拾ってくんなと怒鳴りつけるものの放っておいたら秒で自然淘汰されそうなお人好しと天然を放っておけずなんだかんだで世話を焼きながらしばらく三人で暮らします。
その間に死者をも甦らせる奇跡を起こす生き神様が現れたとか、異形の怪物を見たという噂が広がりまぁこんな辺境の村には関係ない話だと思っていた矢先に噂の怪物に村が襲われ、村一番の腕っ節の勝己が立ち向かうものの健闘虚しく敗れた彼に怪物の剛腕が振り下ろされようとしたその瞬間、実は強大なしかも聖属性の魔力持ちだった出久くんの放った魔力が怪物を消し飛ばす。
本人も知らなかった力で一躍村を救った英雄となった出久くん。子どもの頃から剣術も仕事もからっきしの役立たずの木偶の坊と言われていた彼を俺がずっと守ってやるんだと密かに想っていた勝己は、そんな彼が突然遠くに行ってしまったような喪失感や自分が守ると決めて人知れず剣の修練も重ねてきたというのに何もできなかったどころか逆に守られてしまった無力感やらなんやらに打ちのめされその後なんやかんやで泣っちゃんした後、勇者様だと持ち上げられてしまった出久くんとミドリヤが行くならついて行くぞ友達だもんなと事件の起こった時村の外で金〇みたいな頭した謎の男に足止めされて駆けつけられなかったことを実はかなり悔いているショートと三人の旅が始まります。
かっちゃんの事は好きだけど、それが恋愛感情なのか幼なじみとしての友愛なのかまだわからない出久くんと、幼い頃からこいつはずっと俺が守るんだと密かに一途に想い続けてきた勝己くんとこの世界でかけがえのない大切な人を見つけたいそれがこの二人ならいいなと思ってるショートくんの三つ巴わちゃわちゃ最終的には三人でいちゃいちゃ幸せ正三角関係になるそんなお話。
旅の途中で迫荼sideと出会った時は荼毘くんとシロちゃん侍らしてる圧紘くんを見た出久くんに「魔族って、三人で付き合うのが普通なのかな…?」と誤解を与えたり勝己くんにドン引きされます。ショートくんは俺にも恋人ができたぞそれも二人もだ!とうれしそうに兄に紹介しようとします。
……って、炒飯作りながら妄想していたんだ( ᐕ)