ENDROLL「……ん、」
前髪が揺れて、瞼が震えた。
ゆっくりと開いた視線の先に、愛おしいシアンブルーが見える。
手を伸ばしてみる。触れた頬がひどくあたたかい。蕩けたような微笑につられてほほえんだ。
辺り一面に咲き誇る花々は、きっと枯れることのない景色。差し出される手に手を乗せて立ち上がり、ゆっくりと連れ立って歩き始める。
「あら、あなた帽子はどうしたの」
「君こそ、あの素敵なリボンはどうした」
どこまでも続く景色を進む。吹く風は甘く穏やかで、どこからか鳥の囀りが聞こえてくる。
「少し休憩しましょうか」
せせらぎに差し掛かり座り込むと、隣に寄り添ってくれる感触に今になって気恥ずかしくなってくる。誤魔化すように花を摘んだ。暫くただ、互いに言葉は交わさずにいた。やがて出来上がった花の環を、そっと金の髪へと乗せる。
「似合っているわ、とっても」
「そうか」
きっと以前の彼なら、呆れながらすぐにそれを退けてしまっていただろう。
彼は花を手折り髪に挿してくれた。大好きな紫色の花。彼が触れた場所が熱い。ならばいっそとその胸に飛び込み、花に埋もれる彼を両手に思いきり抱きしめた。
「後悔してる?」
「どうして?」
ふわりふわりと、彼の声だけがきこえた。
目の奥が滲みて、それを見られたくなくて、知らず腕に力がこもる。
「もう、ずっと離してあげられないわ」
熱い腕が背中に回されると、胸の奥がふるえて喉の奥がつまる。
初恋は叶わないと思っていた。けれど何もかもを奪われた先に、彼だけがいてくれた。
愛しているわ。
恋を教えてくれたいとしい人に、たった一度だけ伝えた想いは、この場所できっと永遠となる。
いつかまた会えるだろう仲間たちをのんびりと待ちながら、花を編んで過ごしましょう。
退屈したら優しいせせらぎに足をつけて、そしてふたりきりで唄いましょう。
──青い青い空の果て、神は結び給う。
ひとひらの寂寥を残して、今はただ甘やかな微睡みに身を委ねた。