百合の花が弱点な吸血鬼の話僕の相棒は秘密主義な方だと思う。
口数が少ないわけではないし、むしろ頭の回転の速さと語彙が褒められるくらいには口が達者だ。
でも何となく常に一本、線を引いている気がする。
僕には見えない何かを、見ている気がする。
「わ、きれい」
たまたま通りかかった花屋にふらっと立ち寄り、何となく惹かれたひとつの花に触れた。
「これ、百合の花だよね。なんか儚くていいよなあ」
先ほどまで普通に話していた葛葉の口数が極端に減ったのを感じ、違和感を覚えた。
本人に気付かれないようちらりと横目で見やる。
(お前、花を見てわびさびとか感じるやつだったっけ)
苦しそうな、でも愛おしいものを見るような目。
確かに視線は百合の花をとらえていた。でも何となく、花ではない何かを見出している気がした。
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