Jenga ある作家が言った。シンプルな物体は美しい。私は心惹かれ、その魅力に取り憑かれてしまったのだ、と。
――54本の細長い手のひらサイズのブロックを互い違いに積み重ねると、塔を思わせる塊になる。
上に長く、細く立っているそれをブロックタワーと呼んだ。――
俺の知らない間に、自室の様子が変わってしまっていた。
俺は机の上に向けていた視線を部屋の中に向け、状況を理解するためにしばらく考えこんだ。
俺はゲーミングPCの前で大学からだされた課題を黙々とこなしていた。そんな俺の膝にゆったりと座っていた茜さんは、俺の課題をしている姿を見るのに飽きたのか少し前にどこかへふらっと出かけてしまった。行先を気にかけてはいたけど、なんとなく、ソファかベッドにいるものだと思っていた。いつもそうだったから。だけど今、この部屋の中に茜さんの姿はない。
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