看病 カツン、カツン、よく手入れされた靴音が夜灯りに響く。
腕に抱えた夜叉の子は、ぐったりとして意識がなく、横抱きにして運んでいても身動ぎ一つしなかった。
また無理をしたのだろう。無理をするなと百年以上は言い続けているのに一向に改善されない彼の戦い方は、時折心が痛くなる。もしかすると、心配で摩耗してしまうから止めて欲しいと言えば止めるかもしれないが、魈のことだ。必要以上に落ち込む姿が目に浮かぶ。それは本意ではない。なるべく魈には自由に生きて欲しいのだ。ならば、魈のやりたい事を陰ながら支えるのが自分の務めでもある。
腕に無数の傷、額から流れて既に固まっている血痕。小さい体躯、軽い身体。今日も璃月の安寧を守るために駆け回ってくれた魈のことを、大事にしてやりたい気持ちが募る。彼は仙人だ。故にその辺で眠っていても回復するに違いない。きっと魈は、鍾離が洞天に運んで治療してやることも不要だと言うだろう。それでも早く治療してあげたいと思うのは、鍾離の我儘だ。
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