正直な鏡 「べん。べん、ねえーー、べん」
いつものように機械を弄っていると、後ろからこの場所では聞くことのない名前で呼ばれる。
「ん?どしたの?」そう言いながら振り向くと、「彼」がいた。
彼とは____オネイロスの事である。自分の愛機…それが、ヒトのカタチをとって、目の前にいる。ヒトになっても相変わらず巨体で、何故かふりふりの可愛い衣装を身にまとっている。
「めいぷぅしろっぷ、なくなった」と差し出してきた大きめのビンの中身はカラッポになっていた。メイプルシロップが彼の好物で、暇さえあれば少しずつ飲んでいる。
「あ…ほんとだねえ。局員くんにもらってこなかったの?」
「あれ、キライ。べんじゃなきゃ、ヤ。」
大柄な体で頬をふくらませて駄々をこねるオネイロス。最初は、その姿と振る舞いに少し戸惑ったが…今となっては、非常にかわいいものだ。
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