ガレリアでワルツを「おお、えぐれてんなー」
ガレリアの中心部、丸いドーム型のガラス屋根の下にできた人だかりの中心に、そのモザイク画の雄牛は横たわっていた。同じ男としては少々痛々しく感じる姿で。
「くだらねぇ…」
「なんでだよ。一回ぐらいいいじゃん。最初で最後だよ」
そう言って笑いながら見上げる恋人は苦々しい顔で腕を組む。それでも一緒に順番待ちをしてくれるようだ。口では素っ気無い事を言っても最後には自分に甘い。それを良く知っている。
ミラノ有数の観光地は昼を過ぎていよいよ賑わいを見せていた。歴史ある優美な建造物にハイブランドが店を構えるここヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリア。お洒落に煩いミラノっ子達はもちろんありとあらゆる人種の観光客が行きかっている。
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