崩壊前「ひっ―――――――」
悲鳴は島全体に広がった。唯一日本のS級ヒーラーである美濃部は、逃げた。
いいや、逃げ切れない。
素早い動きで足を切られ、痛いという感覚が来る前に、体が崩れ落ちる。
『オマエモ チガウ』
止まらない血に、美濃部は必死に自身に治癒魔法を掛ける。アリは何か言いながら美濃部の目の前から去ると同時に、ボロボロの白川が美濃部に駆け寄る。
「剛…ッ!」
「た、たいがさん……他の皆さんは…」
「他の奴よりお前のその足……」
治癒魔法をかけても、美濃部の足は戻らなかった。
「なんで……」
ヒーラーは他人を癒す事は出来るが。
自身を癒すのはその能力の半分以下になる。
「美濃部ハンター…ッ!」
洞窟の奥から、最上が向坂を背負って駆け寄る。途中足の事に気づき、息を飲んでから向坂を下す。かろうじて息はしているが、既に危険な状態で、美濃部も急いで治癒魔法をかけるが、息は薄くなる一方だった。
「俺は」
美濃部の持つ本が眩く光ると同時に、向坂の体もそれに包まれる。
「俺は―――ッ!!」
途中でマナ切れを起こし、眩い光はガラスの様に割れ、儚く消えていく。
最上は確認するために向坂の首を触った。
「―――――ごめんなさい」
美濃部は涙を流しながら、両手で顔を覆った。
アリは架南島を出て、日本に上陸し無数に人を食い荒らしていく。五大ギルドはアリの対処に追われ、次第にギルドは信用性を失った―――。