『道門と旬』尾を大きく上に向け、狙いを定める。針は鋭く、毒汁が地面に落ちるたびに溶ける音が洞窟内に響く。
そのスコーピオンの周りには、まだ成長しきっていない一回り小さいスコーピオンが、道門と旬を囲んだ。
「なんでアンタと一緒にこんな所で囲まれなきゃならない」
「俺に聞くな、ダンジョンに聞け」
スコーピオン達が一斉に襲いかかると、旬は両手に短剣を持ち、素早く周りを切り裂いていく。道門も遅れを取らず、別方向からくるスコーピオンを切り裂き、前へ前へと進む。隙を狙ってボスのスコーピオンは尾を大きく振り回し、道門に狙って針を突き刺そうとするが、隠密によって姿が消える。
地面に突き刺した尾を抜き、針が再生される。
隠密が出来ない旬に向かって鋭い足で地面を弾きながら襲いかかる。
「僕を無視するのは、よくない」
スコーピオンの後ろの周り、隠密を解き、尾を狙って短剣を振り下ろそうとした。その時、スコーピーンの尾は道門の体に巻き付いた。
「何…ッ」
素早く振り向き、道門に向かって大きなハサミで殴ろうとするスコーピオンに旬は瞬時に体を捻り、道門の所まで地面を蹴り飛ばす。
「…ぁっ!」
拳を握りフルパワーで大きなハサミに向かって殴れば、硬い甲羅が砕けていく。縛りが緩み、その隙を狙って尾から抜け出す。
「アンタに貸し一つ作るのは、どうも気にくわない」
「その貸しがどうやって帰って来るのか、俺も考えたくない」
怒り狂ったスコーピオンは二人目掛けて毒針を素早く突き刺し、それを避け旬は短剣の握り方を変えながら、尾に目掛けて切り裂く。奇声を上げながら、スコーピオンはそのまま倒れて行った。
道門は短剣で何度かその硬い甲羅に突く。
「あーあ、僕がその尾を落としたかったんだけど?」
「言ってる場合か?」
段々と言い合いがエスカレートし、喧嘩になりそうな所で、スコーピオンが起き上がり旬に向かってハサミを振り下ろした。
「しまっ……!」
反応するのが遅く、見上げる頃には既に遅かった。が、道門が瞬時に腕を切落とし、重い腕が地面に落ちる。
「これでチャラだ」
旬は目を逸らし、直ぐに道門へと戻す。
「助かった」
素直に礼を言うと、道門は段々と顔色を青くしていく。その変わり様に旬は眉を顰め、何か状態でも悪いのか聞こうとした所で道門は口を開く。
「おぇ、アンタから礼を言われるのは鳥肌が立つ」
「…………」
旬は道門の言葉に足を止め、代わりに短剣を持って近づいて行く。その後二人はダンジョン内で派手に喧嘩し、中々出てこない二人に痺れを切らした犬飼がその様子を目撃し、正座させられるまで残り五分。
道門&旬