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    TT_Rex_Solo

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    TT_Rex_Solo

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    ぽんたさん誕生日おめでとうございます!
    夢からの腐になります。
    色々ぐちゃぐちゃしている気がするのでごめんなさい…

    リクエストありがとうございました!!

    『アネモネの涙』 夢にも思わなかった。
    オフィスの椅子に座る彼女は、その幸福を噛みしめながら、静かに書類に向かって微笑んだ。
     テレビに映るハンター達はどれも有名人で、女性ファン達はどれも多い。だから私は、半分ぐらいは諦めていた。







    「リサー、アンタ好きな人とか居ないの?」

    「は、へ!?」

    「何、へんな声だして…もしかしてもういたりして~?」

    「そ、そんなわけないでしょ!?」

    彼女は優奈。この会社…。いや、このギルドに務めてからの先輩に当る人。右も左も分からない私に色んな事を教えてくれたとても頼りになる人だった。

    「やっぱり、白川社長?」

    「へ」

    「あ、その顔図星~?」

    「違うってばー!」

    そう、なんたってここは白虎ギルドのビルのオフィス。
    私は一年前、ハンターでも無いのにも関わらず入社する事が出来た。

    入ろうと考えたきっかけは勿論白川社長に一目惚れしたから。
    我ながら恥ずかしい程の勢いだが、近くで見たいと言う気持ちが抑えれず、いつの間にか手を伸ばしていた。

    入社したのはいいものの、トップクラスのハンターで社長。忙しくない日は無いのは分かっていたが、この一年間一度も会った事がない。
    せめて一目でも見ようとタイミングを計った事があるけれど、結局ガードが高すぎたり、別のハンターを連れていたりとほぼお目に掛かれなかった。


     そうしてお昼の時間帯。私は社内にあるコンビニでおにぎりを買って、バルコニーで空を眺めながら食べていた。

    「はぁ……」

    一体何の為に入社したのか。そもそも叶わない恋に、何を期待しているのかと自分の行動が段々馬鹿らしく感じてきた。

    「もう、辞めようかな…」

    パリパリとのりを噛んでいると、一人の赤毛の男が私の方に指し、誰かに言っている様子だった。



    「突然呼び出しておいて、結局大した事無かったじゃねぇか」

    「話さないと分からない事もあるでしょうに、そもそもアナタが――――――」

    ――――もう、辞めようかな

    ふと聞こえてきた声に、振り返れば女性が一人でもくもくと食べているのが見えた。

    「アナタの社員では?白川ハンター」

    「あぁ?」

    「辞めたい、だそうですよ。社員にも気を配ったらどうですか。」







    「ううん、でもなぁ」

    一人で自問自答をしながら残りのおにぎりを食べ終える。コンビニ袋の中にゴミを入れると同時に、地面には大きな影が私を覆った。

    「すみません、何か会社に不満があったら遠慮せず私に言ってください。」

    「へ…」

    眉をハの字にさせた男が自分に向かって話しかけていた。一目でも見ようと頑張って探していた男、白川だった事に気づいた時には意識は何処かへと飛んでいた。

    「……?」

    固まったまま動かなくなった彼女に、白川は戸惑いながら目の前で手を振るが、やはり動かない。
    リサは放心状態のまま倒れてしまい、医療室まで白川に抱えられているのを全社員に見られてしまった事を、リサはまだ知らない。







    「あぇ……?」

    目が覚めると知らない天井が目に入る。
    隣を見てみると、ハンターの医療係の人がこちらが目を覚めた事に気づいた。

    「気づきました?よかった、たいが……白川ハンターがアナタを連れてきてくれたんですよ」

    白川社長が、私をここまで…?
    心が少しだけ飛び上がりそうだったのを抑えつつ、深呼吸しながらここまで連れてこられる前の事を思い出す。

    「……あの、どうやってここに連れて来たんですか?」

    「え?抱えられて来ましたよ」

    「抱えられ………て!?」

    そういえばこの医療室、オフィスの横を通り抜けないと入れない場所にある。つもり沢山の人達に抱えられている所を見られているという事になる。

    「あの、もう一度気絶していいですか…」

    「俺が怒られちゃうので、はい起きてください!」

    ベッドから無理やり起こされ、持っていた携帯と財布を渡された。

    「また気絶したら貸してあげますよ」

    と手を振ってくれるが、またお世話にはなりたくないなと、頷いて置いた。
    自分の席に戻る事には皆興味津々でこちらに駆け寄ってくる。もちろん優奈先輩もニコニコしながら近づいてきた。

    「白川社長に抱えられてたリサ、よかったよぉ~」

    「うっ、」

    「罪な女ね~、ファンが沢山居る中であんな事されたら今頃焼かれてそう」

    「うぅ!!」

    「で、どうだった?」

    「何もしてないって!」





     その日から思考が止まるようになった。時間がある時はほぼ毎回の様に、白川社長から話しかけてくれる場面が繰り返し映し出される。
    脳内再生だが、大きい手に撫でられたらどんな感じなんだろうか、抱きしめられたら気持ちいいんじゃないかと、段々変な方向に行きはじめ、そんな考えを振り払う。
    が、やっぱり時間があるとついつい考えてしまうのを、顔に出ていたのかまたもや優奈先輩に突かれる。

    「リ~サ、顔に出てるよ?」

    「はい!?」

    「もう、そんなに白川社長が好きなら直接お誘いしちゃいなよ!周りが黙ってるかは知らないけど」

    「優奈先輩はどっちの味方なんですか!そもそもそんな事出来ないですって」

    「えー?リサならバチコンと決めて来なさいよ~」

    そんな度胸があったらとっくの昔に誘ってる!と心の中で叫んでいると、後ろから声を掛けられた。

    「遠藤さん、ですかね。あの後大丈夫でしたか?」

    「へ、あ、はぃ…!?」

    振り向けば、顔が大分近い場所にあったことに思わず身を引いてしまった。それもそのはず、白川社長がこんなに近い位置にいるのは自身の心臓が持たない。

    「ほら、リサ、言っちゃいなよ!」

    「……?」

    耳打ちでアタックしに行けと言う優奈先輩。その様子に頭を傾げる白川社長に思わず吐血しそうだったので口を押える。なんだあのギャップは!!とまたも心の中で叫びながら、ゴクリと唾を飲み込み、口に出してみる事にした。


    「あ、あの……もしよければ……」

    「はい…?」

    「こ、今度ご飯でも…」

    「食事、ですか?………私で良ければいいですよ、前は驚かせてしまったので…」

    つらつらと白川が話しているのにも関わらず、リサは会話の内容が全く頭の中に入らなかった。
    優奈が途中でリサの前で手を振るが、放心状態で止まっている。
    まさか自分の誘いに乗ってくれるとは思わず、嬉しさが溢れかえっていた。

    「リサ~?大丈夫~?リサー??」

    机の上にがくんと頭を打ち付け、気絶してしまった私は、次に目が覚めた時には、白川社長からの連絡先が書かれていたメモが貼られていた。







     この日一番の幸福が自分を待っていると、リサは嬉しさを隠せないままデートの準備をしていた。
    昨日は美容室、ネイルサロンなどに通い、白川社長の隣に立っても恥ずかしくない女性として整えた。
    フリフリのロングスカートに、シンプルな鞄。
    浮かれている?浮かれるに決まっている。
    ヒールを履く音は、楽しげに弾んでいた。


    「お待たせしましたー!」

    「ああ、遠藤さん」

    身軽な服を着た白川社長に、思わず目眩がした。
    かっこいい、好き、そんな感情が溢れ出しそうになる。
    でも想いを伝えるのにはまだ早すぎると考え、ぐっと堪えながらそのデートの日を楽しんだ。
    本当に白川社長が彼氏の様な、そんな気がするぐらいの夢の様な一日に、私は人生の中で一番幸福だと思えた。







    ―――――そうだと思いたかった。







    「今日は誘いに乗ってくださってありがとうございます、白川さん」

    「いえ、私も遠藤さんに失礼な事をしたので…」

    「された覚えがないんですけど………あの、その。」

    「はい?」

    食事をしながら話していたのを、同時に手を止める。

    「白川、さんは……その…好きな人とか居たりするんですか?」

    「好きな人ですか?」

    悩む白川にほんの少しの希望を持ちながら返事を待つ。
    うーんと考えながらフォークを皿へと置いた。

    「そうですね…相手もそうだといいんですか」

    目をこちらに合わせたかと思いきや、窓の方向へと向かれる。
    その意味に、リサは察した。

    「…………想い、伝わるといいですね!私応援してます!」

    「ありがとうございます…、遠藤さんとお話出来て良かったです」

    「はい、私も」

    レストランから出た後、家まで送ると言ってくる白川を大丈夫ですと断りながら帰路についた。
    振りかえらないように、汚い顔を見せないように、私は帰り道を歩いた。
    赤くなった足は痛く、苦しく、重い。

    「………当たり前、なのにね」

    自分の惨めさに歯止めは効かなかった。

    「分かってたのに」

    化粧と同時に流れる涙は濁った黒色で、自分の汚さを表している様だった。










    「おや、前の女性と相手をしなくていいんですか?白川ハンター」

    「先日辞めた所だ。新しい体験をしたいからだ、と。」

    「そうですか……残念ですね」

    最上は足を伸ばしながら、その指で白川の頬を突いた。
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