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    TT_Rex_Solo

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    犬旬 ギャグ寄せ ポメガバース
    ポメガバースという性別がない世界ですので、マスターもパートナーもありませんが、おそらくこの後何度も旬がポメ化するでしょう。

    旬「最上ハンターは香水と煙草がちょっと…」R18なし 犬旬

     システムから通知される『レベルアップしました』は、もう見飽きてしまった。
    100を到達したあたりからは、メッセージは読まなくなってしまい、目の前にいるモンスターを狩り続ける。
    自分が倒さなければ、皆が死んでしまう。自分が行かなければ。
    自分自身に呪いをかけるよう言い続けていた。




     ボフンという音と共に、旬の体は煙に包まれた。
    『王よッ―――!』
    慌てて煙の中へと突っ込んで行ったベルは、悲鳴と共に出てくる。
    腕の中に抱きかかえられていたのは、黒い毛で覆われた青い瞳のポメラニアンだった。
    頭を抱えたイグリット、慌てふためくベル。そして何も分かっていないアイアンとタンク…。キャンキャンと鳴く旬(ポメラニアン)は容赦なくベルの手を噛んだ。
    『キェッ』
    腕が緩んだ隙を見て抜け出し、そのまま何処かへと駆け出していく。
    幸い攻略後だったので現実世界で、行く先は道路側。慌ててベルが捕まえようとするが、大通りにこんなデカイアリが出てきたら大騒ぎになるに違いないと、後ろからベルの触覚を引き千切る勢いで引っ張った。
    『貴様ッ』
    『――――』
    『確かにそうだが!』
    『――――!』
    『お前と言い争っている暇は――――――王…?王よーーーッ!!!!!』




    旬の足取りは軽かった。ちまちまと歩く小さい手は中々前に進まないが、周りの人達を癒す効果があるらしい。皆足を止めて、ふわふわと黒い毛玉が動くのをにこにこと見ている。
    「……おや、ポメラニアンですか…」
    赤毛の男がポメラニアンに気づき、すっとしゃがみ込んで手を差し出す。
    しかし何故か嫌な匂いと雰囲気がしたので、唸りながら一歩一歩と引き下がる。
    「何してる」
    「え?あぁ…首輪の付いていないポメラニアンがいたものですから」
    「やめておけ、噛まれたら病気になるぞ」
    「噛まれたら俺が治すんで、大丈夫ですよ、おいで~」
    横から黒髪の男が手を差し伸べる。こちらは特に嫌な感じがしなかったので近づけば優しく体を撫でた。
    「最上ハンター、嫌われてますね」
    「うっ……ぐ…、僕の体に何かあるんでしょうか」
    「絶対ヤニだろ」
    「燃えカスにして差し上げてもいいんですよ?」
    「ほぉ、やってみろよ」
    「喧嘩はやめてくださいよー」
    美濃部はそのままポメラニアンを抱きしめたまま立ち上がり、二人の喧嘩を止めようと間に入る。
    「しかし、首輪ナシのポメラニアンか……」
    「このまま届ければ、保健所行きになりますね」
    「犬ならあの人物に任せればいいでしょう」
    あの犬…?と白川と美濃部が悩みに悩んで出てきたのは、ハンター協会の犬飼課長。さすがにそんな事を言ったら怒るだけで済むのかどうかと考えるが、このまま保健所に連れて行くのも可哀想だなと、三人はハンター協会までこのポメラニアンを届けた。



    「ここは迷子センターではありませんが」
    「そこをなんとか!」
    突っ返されるポメラニアンと、両手を合わせて犬飼にお願いしている美濃部の姿。黒いポメラニアンはハッハと息をしながら尻尾を振っている。
    「何故、僕が。」
    「なんとなくです」
    「ほう、何となくですか?本当に?」
    名前に犬と付いているからという判断ではありませんよね?という圧をかけられるS級ハンター三人。本当だともと必死に縦に頷く白川と最上に、犬飼は溜息をついた。
    「まあ、一時的には預かっておきますが」
    「助かります~」
    美濃部からの手から抜けていくポメラニアンの表情は悲しげで、思わず犬飼の手から取り上げたい美濃部だが、ぐっと堪えて涙を少し流す。
    「またくるね、ポメ蔵…」
    「「その名前やめろ/やめてください」」
     
     騒がしい三人が返った後、犬飼は黒いポメラニアンを連れて帰る。
    玄関先に足を付けさせると、新しい場所に興味深々なのか、あちこちに匂いを嗅ぐ。
    「……水篠ハンターのような目だ」
    「…?」
    頭を傾げれば犬飼の心臓に何かが突き刺さり、危うく膝を地面につくところだった。
    身につけていた物を脱いでいき、身軽になった所で風呂場へ向かおうとすると、黒いポメラニアンも入ろうとする。
    「……」
    体を持ち上げて風呂場から出してドアを閉めると。短い前足でドアをカリカリと引っ掻いては悲しげな声で鳴く。その声を何度も聞いていると、段々悪い事をしているようで罪悪感が強くなり、さっさと風呂を終わらせた。
     明日も早く出社しなければならない犬飼は、ベッドの上で横になっていると、黒いポメラニアンが犬飼の顔を埋めるように横になる。何だか独特な香りで癖になりそうで、スンスンとネコ吸いのようにポメラニアンを吸う。
    何度か撫で回したり、匂いを嗅いだりしていると次第に瞼は閉じていき、深い眠りにつく。

    次の日、しっかりとした髪の毛が鼻を擽り、瞼を開ければあの水篠ハンターが隣にいた事に驚き、ベッドから落ちてしまう犬飼まで残り数秒―――。
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