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    lunatic_tigris

    @lunatic_tigris

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    lunatic_tigris

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    その華を見た人が居たなら、もしかしたら綺麗だと思う人が居たかもしれない。そう思う人がいたなら、それは彼女にとってこれ以上ない手向けになるだろう。

    お借りしたお子さん
    六舞燐さん(迅さん/@Jin__kikaku
    名前だけ:咲良ちゃん(さゆのさん/@sayuno315

    黒雉子(白茅万華)のロストの話です。今までありがとうございたした。

    ##機密隊高月

    雉子は宙へ なんで自分ってあんな見栄っ張りなんだろうなぁ。
     物陰で、暗い空を見上げながら黒雉子――万華は嗤笑する。
    「茅」
     心配するような、俯くような。そんなふうに傍へ留まる白雉の頭を「大丈夫だ」とでも言うように撫でた。そんなことは、全くないというのに。
     駄目だな、という感覚を握り潰すように、熱を抱えたその羽毛を指にすくう。ジャケットの中が、酷く冷たい。
    「――はは」
     もうちょい遊んでおけばよかったな、やりたいことやっとけばよかったな。恋するとか、そんなことも。
     でも、いくら考えたところで、自分は「ないな」と答えるからどうしようもない。
     時間はもうない。
     心配なことは幾つもある。悔いだって沢山ある。
     きょうくんは、咲良ちゃんは大丈夫だろうか、とか、六舞さんは何とかなるだろうか、とか。
     気軽に投げるように、ついネックレスの万華鏡を渡してしまったのは――例えるなら、なんだろう。最後の未練だとか、その辺で。だって楽しかったから。先輩後輩として話をしたり、酒を飲んで、花を咲かせたくだらない話の中にたまには愚痴って。いや、私だけが楽しいだけだったかもしれないけど──うん、立派になったと思うんだ。あんないい男の「この先」が見れないのは残念だけど、まあ仕方ない。それは生きてる人間の特権で、死者のものじゃない。
     ――ああ、とても楽しかった。
     そんなある意味負け惜しみのような、悔いを滲ませた感情を胸中に抱いて、こう呟く。
    「――だからなあ、頼むよ。私を殺してくれ。まだ生きてるうちに、まだ会えるうちに」
     できるなら、骨も残らないように焼き尽くしてくれ。茅からそんな頼み事をされても困る、という言葉が聞こえた気がして笑うしかなくなった。
    「……死にたくないなぁ」
     嫌だ。嫌だ。何も言わない肉の塊になって、見送られて、最後には骨になって。そうして生きている人の中で生き続けるなんて嫌だ。死に顔なんて、誰にも見せたくない。思い出すならどうか、格好付けの格好悪いところじゃなくて、白くぼやけたような、「あんなことがあった」というなんでもないような、それでいて美しい思い出であってほしい。
     ――頼むよ、とありったけの札を貼り付けたテレイドスコープを宙に放り投げる。
     筒の中に映し出された景色の中で緩やかに炎の花が咲き始めてから、全てを諦めたように白雉は翼を開いた。
     悪いなと笑って、目を閉じて――万華は音すら飲み込む、色とりどりの花の中に沈んでいった。
     
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