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    lunatic_tigris

    @lunatic_tigris

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    lunatic_tigris

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    もしそこに、あの人が居るのならこの言葉を伝えてください。
    その人は、私が──

    魚姫涼香のロスト話です。今までありがとうございました。
    お借りしたよその子
    花牟礼さん(紅茶水さん/@ASGX_7135

    ##機密隊高月

    Are you going to ***? 瓦礫が崩れる轟音と共に、水が形を留めずに落ちていく。
    「――花牟礼さ、ん?」
     引きれるような感覚が消えない喉を動かして、名前を呼ぶ。呼びかけへのいらえはない。
     突然細い何かが絡みつくような、冷たく嫌な感覚に足を動かす。
    「はなむれ、さん」
     一面の瓦礫。声を上げる。呼びかける。
     深海のように暗く、閉じた夜に明かりはない。
     ただ影ばかりが落ちていて、音すら帳の向こうにあって。姿は見えない。声も聞こえない。どこに居るのかも、分からない。なのに、剣は刃毀はこぼれもせずに輝きを残していた。
     こん、と乾いた咳が、やけに息苦しい喉から落ちていく。
     応えはない。
    「はなむれさん」
     応えはない。
     ガラス片が刺さったように痛む脚で歩き回りながら、闇雲に声を出す。
     咳の混ざる声がどれほど聞き苦しくなっても、か細くなっても、ひたすらに。乾いた咳の音が、重くなっていくのも無視して。
    「花牟礼さん」
     ようやく、届いた。
    「……ああ、あなたですか」
     瓦礫の下に、彼はいた。
    「――助けてください」
     ――分かっている。ここで助けても、この人はきっともう私を見ない。そもそも、助かるかなんて言われたら。
     それでも、手を伸ばさずにはいられない。「もう一度」がないことを分かっていても、夢を見ずにはいられない。
    「うん」
     だから、その声に応えを返す。
     瓦礫を抑えている彼の手の爪から、血が吹き出していた。痛そうだな、なんて熱に浮かされたような思考で他人事みたいに思うのは――もう、自分の方が限界だからかもしれない。今こうなっているのが、不思議なくらい。呼吸はどんどん苦しく速くなって、体もうまく動かせなくなっていく。今、瓦礫を退かそうとする手に、どれだけ力は入っているのだろう。
     そうこう足掻いているうち、何かに罅が入ったような、嫌な音がしたのと同時。ああ、もう無理だ。と、咳き込んだ時に思わず口元にやった手に付いた薄ピンクのものに、ぼんやりとした回らない頭でそう悟る。――もう、どうにもならないのだと。
     崩れる音が、耳に届く。
     この人を助けたかったのに。それか、せめて。
    「――ねえ、花牟礼さん。手を、握ってもいいですか」
     応えがないまま、瓦礫を抑えている血塗れの手の上に、黒く濡れた自分の手を重ねる。だって、独りはあんなにも寂しくて苦しいから。

     ――でも本当は、あなたといきたかった。

     吐息のように「好きでした」とその唇が呟いた直後、轟音を立てて瓦礫の山は津波のように崩れ落ちた。
     
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