贈り物(仮) 本格的な夏の暑さがってきた頃のこと。
まだ日が低い時間に雲夢から姑蘇への使者がやってきた。
藍曦臣の目の前で雲夢の門弟が恭しく拱手すると、後ろに控えていた別の門弟がその隣に立ち、桐の箱を両手で支えて差し出す。
自らその箱を受け取ると、仄かに桐の香りが漂った。
送り主には心当たりはあるが、贈り物を貰う心当たりがない。
はて、と首を傾げつつもあまり便りを寄こさない恋人からの贈り物は素直に嬉しく、両手でしっかりと抱えて寒室に持ち帰った。
箱を開けると、そこには一本の蓮花の蕾。
贈り主の霊力が微かに残ったそれを寝台の端に活けると、藍曦臣は満足そうに微笑んだ。
毎朝欠かさず、水揚げと水切りを行い、夜にはおやすみと声をかけた。
2002