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    猫灰猫

    大丈夫だ、ここにはマンサクしかいない。

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    猫灰猫

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    続かないのでポイ。

    「ねぇ、そこ座んなさいよ!」「ほら、お皿頂戴。クリームまだあるわよ!ケーキの方がいい?」「綺麗な髪ね!何油使ってるの?」「いいでしょこれ?ゲルドで今流行ってるんですってよ。」「あれ、旦那さん?かっこいいわね!」「まだ赤も白もあるわよ。」「明日朝早いのよねー」「私お腹すいちゃった」「あんたさっき痩せなきゃって言ってたじゃない!」「さっきの話よ!今じゃないわ!」

    次々に飛び交う女たちの言葉と笑い声にゼルダはハイラルの復興を確信していた。
    旅の途中で立ち寄った馬宿場の旅人たちの夕食時間には厄災討伐直後の魔物への警戒心からくる殺伐とした雰囲気はなく、人出も増え近くの農地で採れる新鮮な野菜を使った豊かな食事や酒やら甘いものと、鍋を取り囲む人々の顔には笑顔がある。
    馬宿場は魔物避けの休憩所ではなく、物流の拠点地になり、人々の交流の場へと姿を変えつつあった。それはすなわち魔物の恐怖から脱却し、100年以上前の心やすらかな生活へと急ぎ足で戻ろうとしているように見える。厄災討伐直後は各地の馬宿場を中心に厄災討伐の情報が流れた。魔物を避けてひとときの安らぎを求める人々が行き交う場で馬宿協会の情報は確実で生死に関わるものが多く、その信憑性は確かであったが流石に厄災討伐の情報だけはにわかに受け容れられ難いものであった。

    100年前の姫巫女と復活した勇者が厄災を退治した。

    まさかどうやって?100年前の姫巫女の伝説は本当だったのか?とてもそんなのは人間のできることじゃあないだろう。
    100歳過ぎたおばあさんが倒したの?勇者が復活?
    そんな凄そうな男は見かけたことないな。
    城からのすごい光を見た。あれが厄災封じだったんだ!
    ハイラル城から怨念の影が消えたがまだ魔物が巣食っているらしい。
    魔物が減って来て旅がしやすくなった。
    野菜の育ちが良くなってきたみたいで助かる。

    王家の紋章をつけた美しい女性が従者を連れて旅をしているのを見た。

    お姫様かしら?
    勇者はどこへいったんだろう?
    王家の復活?あの魔物の城に?
    税金制度が復活するのか?まだ食いもんにも困るのに!
    王家が復興すれば軍もできて魔物もガーディアンも全部退治してくれるかも。
    まだ赤い月は出てくるからなぁ。姫様がハイラルの女神さまなんだろう?
    その二人は一体どこにいるのか。

    人々の混乱を避けるべく、ゼルダは巫女服も王家の紋章のついた軽装もしまい込み、だだのゼルダとしてハイラルの復興を願いながら各地を周り人々の生活の基盤となる安全のための準備を手伝って回っている。人は国という体の中をめぐる血なのだ。血が巡らなければ体は酸素を運ばれずに腐ってしまう。血を運ぶためには商業という心臓が必要だ。血が運ばれたら酸素を供給するために街が必要になってくる。血を作り出すためには食べなければいけない。農業の発展改良も不可欠。血の通りを良くするための経路の安全確保、自警団の結成、馬宿協会との団結。。。。
    街の再建のための人出集めから物資の調達準備、商人との交渉や団体制度、街自体の自治のための人選びもした。リンクが経験したイチカラ村開村のモデルを参考に人が行き交い、落ち着いて暮らせる場所を作っていくためにかつての王妃としての会話術が大きく役に立った。リンクと一緒に回った各地からのゼルダに指南を求める声は多く、常にどこかしらで問題が起きている。いつからかカカリコ村に連絡所兼相談所を置き、ゼルダは古の王家執務補佐官とこの国の基礎をコツコツと築き戻していこうとしている。やはり彼女は生まれながらの王女なのだ。人々の活気に当てられながらも彼女を動かしているのは何よりもこのハイラルを愛する心だった。

    これだけ各地を一緒に回り協力して大事をこなし、寝食を共にするという身近にいながらも二人の関係は100年前の関係から1歩進んだ友人、という位置ずけにしかなかった。その関係性すら怪しく、人々の手前王妃と騎士であるとふれて回るのに抵抗がありゼルダがリンクに頼み込んだものだった。
    リンクは回生後、実にのびのびと生きていた。あの無口で何を考えているのか解りづらかった無表情は消え、大口を開けて笑いながら人々と会話している。時に眉をひそめ唇を突き出して拗ねている様なんてあどけなさの残る青年の微齢に一層の魅力を加えていた。リンクはゼルダと厄災封印を果たすまでに時間が必要だった。その時間は二人の年齢に差を作り、いつの間にかリンクは一足先に大人としての一歩を踏み出していたのだった。
    野生児のその精神的成長はゼルダにだけ向けられ、人々と話す時には実に子供っぽい態度なのにゼルダにだけはかつての騎士然とした言葉使いと距離で”友人”として横に立っている。ゼルダはかつての騎士にその任をといたにも関わらず寄り添ってくれるリンクの優しさに感謝しながらも一抹の寂しさを覚えていた。
    リンクに対する恋心は100年たっても冷めることはなく、たくましく成長途中であるリンクの体つきや以前よりも見せるようになったふとした隙のある仕草に胸が高鳴ることが多くなった。そんな折に提案されたハテノ村での休息はゼルダの心を躍らせた。ハイラルのためにと目まぐるしい日々を送る中でリンクの生家での小さな休息はゼルダの心を癒す。
    二人きりでの市井の生活。まるで夫婦みたいだと想像してしまって一人でのぼせてしまう。彼はあくまで友人を演じてくれているだけなのだと言い聞かせながらも、少しだけ甘い期待を抱いていた。

    春の終わりに訪れた何度目かのハテノ村で、変化は訪れた。赤い月ごとにリンクが村の安全のために森の魔物の数を減らし、村人たちが森の幸にあやかれるようになったので今では呑気にピクニックまでできるようになったのだ。
    久しぶりの二人きり、草の上ののんびりとした空気の中でリンクは寝顔さえ見せてくれるようになった。
    それでもウブなゼルダはどうしたら良いのか分からず本を両手に顔を隠し、リンクを覗き見することぐらいしかできなかった。それを突然の夏を告げる雷雨が二人の関係を変えてくれたのだ。ずぶ濡れになりながらも、暖かい雨に祝福されて二人は口ずけを交わした。
    ずっと機会を伺っていたというリンクの言葉に、ずっと同じ気持ちでしたと伝えるのがようやくだった。
    それからは日に1度必ずキスを交わし、手を繋ぎ、抱きしめてくれるようになっていた。
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