禁術実験中、禁術汚染を浴びてしまい一時的な記憶喪失になったⅫソファーでくつろいでるファスト、リビングに来るⅫ
Ⅻ「…?おい。誰だ貴様。いつ、どうやって侵入した?」
ファスト「え?何ふざけてんの兄さん」
Ⅻ「口答えをするな。俺の質問に答えろ。」
ファスト「は?何?何言ってんの急に」
Ⅻはファストの頬を引っぱたく
Ⅻ「もう一度聞く。お前は何者だ。」
ファスト「…!?…!?」
Ⅻ「答えろ。」
ファスト「だ、誰って…自分の弟でしょ…?どうしちゃったの、兄さん……」
Ⅻ「俺に弟はいない。お前、階級は。」
ファスト「ち、中級…」
Ⅻ「中級だと?はっ、聞いて呆れるな。この俺の身内が、中級なんて低クラスの悪魔だと言うのか?下等悪魔の分際で、随分と俺を侮辱してくれるな。」
ファスト「ぇ……っ…?」
Ⅻ「慈悲をくれてやる。10数えるうちに俺の前から消えろ。また口を挟むようならその首を刎ね飛ばす。…1。…2。…3。」
ファスト「兄さ…」
ファストの首にⅫの尻尾の刃が突き立てられる
Ⅻ「4。5。6。」
ファスト「っ……!!」
ファストはその場から逃げ出す
……
……
ピンポン、とチャイムが鳴りドアを開ける
ヴァイス「あれ、弟くん?どうしたの」
ファスト「…ぐすっ、ひっく……ヴァイス…っ…」
ヴァイス「えっうわ、えっ!?大丈夫!?ほら入って入って!!」
……
ヴァイスに縋りつきしゃくりあげて泣くファスト
ヴァイス「どうしちゃったの弟くん。頬腫れてるし、首もちょっと怪我してるし…」
ファスト「ひぐっ、に、にいさ、兄さんに、っ、叩かれて…っぐす、酷い事、言われて、っ…」
ヴァイス「…は?Ⅻが?いやいや、そんな訳無いでしょⅫだよ??偽物じゃないの??」
ファスト「ひっ、ひっ…お前は、誰だって、叩かれて、っ、弟なんていないって、言われて…ぐす、下等悪魔がって、言われてっ…消えろって、殺されかけて、っ…わぁあぁぁん…」
ヴァイス「………」
……
Ⅻに電話をかける。
ガチャ
ヴァイス「もしもし、Ⅻ?」
Ⅻ「あぁ。なんだ」
ヴァイス「ちょっと。弟くんめちゃくちゃ泣いてるんだけど?何してんの」
Ⅻ「俺に弟はいないが。」
ヴァイス「…はぁ。あっそ。じゃあ可愛い可愛いファストくんは俺が貰っちゃうね」
Ⅻ「ダメに決まってるだろ」
ヴァイス「なんで?知らない人なんでしょ?良いじゃん貰っても。」
Ⅻ「知らない人な訳ないだろ。ファストは俺の大事な……」
ヴァイス「大事な何?」
Ⅻ「……弟だ…!!!!ファスト!!!!!」
ヴァイス「思い出した?Ⅻ、弟くんに何したか覚えてる?」
Ⅻ「ファストに俺は………あ、あぁ!?!?そうだ弟じゃないか、あぁなんて事を!!!!!ファスト!!!い、いない!!!そっちにいるか!?!?!」
ヴァイス「いるよ。もうすっごい泣いてんだから。」
Ⅻ「あぁあぁ……ファスト…あぁ俺はなんて事を…!!今すぐそっちに向かう!!!」
……
Ⅻ、合流
Ⅻ「ファスト!!!」
ファスト「っ…ひっ…ひぐ……」
Ⅻ「あぁぁファスト……すまない…あぁ俺はなんて…なんて事を……ファスト、すまない許してくれ…何度叩いてくれても構わない、もう殺してくれて構わない。ファスト…どうか許してくれ…」
ファスト「ぐす…っ、ぐす…お、俺の事っ、叩いたり、っ、酷い事言う兄さんなんて、っ、もう知らない…っ!!」
Ⅻ「あ”あぁぁあぁ………ファスト…ファスト……俺は…俺は、お前がいないと生きていけないんだ…お前がいない世界なんて生きていたって仕方がないんだ…ファスト、どうか帰ってきてくれ…お願いだ…ファスト…俺を嫌わないでくれ…帰ってきてくれ…お願いだ……」
ファスト「酷い兄さんなんてっ、嫌い、っ…」
Ⅻ「っぐ、ぐぅうぅぅぅ………か、かくなる上は、ファストの記憶を消して無かったことにするしか…」
ヴァイス「禁術じゃん!!二の舞になるからやめな??」
Ⅻ「っうぐ…ファスト…ファスト……」
ヴァイスからファストを引き剥がして抱きしめる
Ⅻ「ファスト…ファストごめんな……まさかお前の事を忘れてしまうとは思わなかったんだ…ファスト…大好きだ…愛してる、愛しているぞ…この世の何事にも変え難いほど、お前を本当に深く愛している…」
引っぱたいて赤く腫れた頬を撫でる
ファスト「ぐす…ぐす……俺の事、低級悪魔だって…っ、ぐす、兄さんの弟なのに、情けないって…っ、ぐす…恥晒しだとか、思ってるんでしょっ…ぐす…」
Ⅻ「思っている訳無いだろう!!!!こんなに努力家で健気で愛おしい弟なんだ、情けないなどと、恥晒しなどと言える訳がない!!!!」
ヴァイス「言ってるけどね」
Ⅻ「他の奴になら言うが、お前にそんな事を思った事は一度たりともない!!!!」
ファスト「ぐす…っ…気にしてるのにっ……俺が、一番っ、わかってるのに…っ……ぐす、兄さんはっ、すごく強くて…ぐす、色んな魔術生み出してるすごい魔術師で、っ…そんな、すごい悪魔の弟が…っ…中級止まりで情けないって…っ…ぐすっ…俺が、一番わかってるよっ…ぐすっ…出来損ないだって、俺が一番わかってるよ…っ…わぁぁぁん……」
Ⅻ「ふ、ファスト……あぁ、あぁぁぁ……そんな…そんな事を、思わせてしまっていたのか……?俺のせいで、そんな辛い思いを…させてしまっていたのか…?お、俺が、俺が間違っていたのか…?お、お前を、お前を守りたい一心で…お前に慕われる兄で居たいと、お前に恥をかかせまいと、ここまでやってきたのに…?間違っていたのか…?俺は、間違っていたのか…?あ、あぁ…弟を想うあまりに、弟を傷付けていたとは……お、俺は、今までずっと、何をして……」
Ⅻ、ポロポロと涙をこぼし始める
Ⅻ「無意味だったのか、全て…俺がしてきた事は、何の意味も……ここまで、頑張ったのにな…そうか……そうか…………」
ヴァイス「うわ、Ⅻが病み始めた。…弟くん。劣等感感じちゃうのは仕方ないんだけどさ?Ⅻほら、弟くんの為にずーっとガリ勉してきてるからさ。もう全部の原動力が弟くんな訳。弟くんが頑張ってないって言うつもりは無いけど、寝る間も遊ぶ間も惜しんでずーーっと弟くんの為に勉強してきてる奴だからさ。もう友達も作らずにずーっとガリ勉してる奴だから、差が出ちゃうのは当然なの。Ⅻがめちゃくちゃすごいのは、Ⅻの努力の賜物な訳。Ⅻが天才じゃなくて秀才なのは、弟くんが一番よ〜〜くわかってるはずでしょ?だからさぁ、ね?うん。その辺は無視しないであげて。コイツそのうち死ぬとか言い出すよ」
Ⅻ「死ぬ……弟を傷付けるような俺は死んだ方がいい…もう存在しない方がいい…もう死ぬか…」
ヴァイス「ほら言い始めた。も〜Ⅻ戻っておいで〜ヘラってるよ〜。弟くん何とかしてコイツ」
ファスト「ぐす…っ…ほ、本当に、思ってない?俺の事、情けないって、思ってない?」
Ⅻ「……っあ、お、思ってない!!!思う訳が無いだろそんな事!!!あんなに頑張っているお前を情けないだなんて、絶対に思うものか!!!」
ファスト「…ぐす……消えろって、殺そうとしたりしない…?」
Ⅻ「絶対にしない!!!!そんな事するものか!!!!消えて欲しいなどと思った事すらないのに!!!!!」
ファスト「ぐす…ぐす…っ…もう、俺の事忘れないでね…ぐす…約束だよ…」
Ⅻ「もちろんだとも!!!!!約束しよう、もう忘れない。ぜっっっっったいにお前を忘れない!!!!!あぁファスト、俺の愛しいファスト…」
思いきり抱きしめる
ファスト「んぎゅ…苦し……」